第10話 隠しダンジョン
「もうそろそろのはずだ」
僕らは魔物を倒しながら下へ下へ進む。
すでに五階層まで来ており、もうすぐ六階層へと行ける転移魔法陣を付きそうだった。
「次は六階層ですね」
「ああ」
適当に相槌を打つ。
もうどれくらい経ったか分からない。
外と中とでの感覚が少し違う。
転移魔法陣への入り口に着くと、アルスが中へ入ろうとする。
しかし僕はその一歩手前で止まる。
「ルイ兄様?」
入り口のすぐ横にある小さな穴に近づいていく。
そこへと手を入れて中を探る。
「お、やっぱりあった」
穴の奥に小さなボタンがあり、それを押す。
「な、何を・・・!」
ギ、ギギギギーー―――バタン
ボタンを押すと同時に大きな扉の開く音がする。
穴は無くなり、僕のすぐ後ろに下へと続く階段が現れた。
これこそ隠しダンジョンへの入り口。
小説内で主人公たちが見つけたものだ。
もっとも本来数年後のはずだが。
「な、何なんですか、これ!」
「隠しダンジョンだ」
「え!ど、どうして入り口が分かったんですか!」
「まぁ〜勘だ」
まさか前世の記憶で、なんて言えるわけない。
「よし、行くぞ」
長い長い階段を降り、どこまで続くかわからない道を歩き続けた。
どれくらい経ったか分からない頃。
出口らしい場所が見えてきた。
少しとはいえ明かりが漏れ出ている場所へと足早に向かう。
そして、遂に着いた!と思ってそこに入ると奴がいた。
大きな部屋に数本の蝋燭。大きいと行っても目算で縦横五十メートルほど。
赤土で囲まれた部屋の中央に魔物オーガが佇んでいた。
オーガは高さ五メートルの人間に似た魔物。
しかし体全体は赤く、筋肉質な体。
茶髪な髪の毛に、額からは二本の角が生えていた。
手には刀のような物を持っており、それを使って攻撃してくる。
動きは素早く、力も強い。
だが、脅威はそれだけではない。
一番厄介なのは魔法を使ってくるということ。
それだけ高位の魔物だ。
レベルがたしか・・・上級ほどはあったはずだ。
僕はもう少しで聖級に達するまではあるが、それでも魔法は上級しか打てない。
一方でアルスは剣士だ。
剣を使うものにもランクがあり、剣習い、剣士、達人、剣豪、剣王、剣聖とある。
一般兵士は剣士ぐらいまで、騎士は達人からなれる。
とりあえずアルスは一般兵士ぐらいの戦力しか無い。
七歳で剣士なのは凄いが、今は頼りない。
前方のオーガを見て、考える。どうやって倒そうか。
隣のアルスを見ると足が震えていた。
無理もない。
自分より数倍大きい異様な雰囲気の敵が刀を持っている。
チビらないだけましだろう。
グァルルル?
僕らに気づいたのかオーガがこちらを向く。
グラァァァ!!!
「ヒッ!」
威嚇するようにオーガが吠えるとアルスが後退る。
が、僕は平然としている。
怖くないと言ったら嘘になるが、そこまで恐れは無い。
何故?だって僕はブルボン家の長男だよ!
選ばれた家柄、選ばれた血筋、選ばれた才能。
何だって持っている!
だから、恐れるものなんて無い。
ここで引いたら家の面汚し。
前世の二の舞いは踏まない。
だから、
「風を操りし民よ、荒れ狂う風を、呼び起こせ、【ティープ・ロー・ウィン】!」
オーガへと魔法を放った。
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