第8話 隠密
新たな部下を手に入れた。
異母兄弟のアルス。本来僕に歯向かうものだった奴だ。
いつ裏切られるか心配でしか無いが、とりあえず今のところは大丈夫だ。
アルスは常に僕の隣にいて、一応護衛をしている。
もちろんまだ剣もロクに振れないため毎日訓練をしている。
僕は僕で魔法の練習をしている。
「ルイ兄様、紅茶を用意いたしました」
「ご苦労」
背伸びをしながら僕の前の机に置く。
しかし、兄様呼ばわりされるとは。
まあ、かと言って仮にも弟に坊っちゃまと呼ばれるのも嫌だから気にすることをやめた。
「アルス、剣術は順調か?」
「はい!」
「よろしい。僕の部下として恥じない力を付けるように励むんだ」
「はい!」
アルスは元気よく返事をする。
僕は読みかけの本を閉じて目を瞑る。
アルスが家に来て一年、この世界に転生して八年が経とうとしていた。
これからどうしたものか・・・
ずっと考えていた。
家柄が全て!そうあいつらに証明するという目標は変わらない。
そのために魔法を日々練習して強くなった。
色々な努力はしてきた。
前世のようなことが二度と起こらないように。
しかし・・・不安でしか無い。
仮にも敵は主人公達。何だかんだで負ける可能性がある。
だからこそ準備は怠らない。
アルスも仲間にとりあえず入れた。
少しずつ不安要素を消してきた。
だから・・・
「よし、ダンジョンに行こうか!」
「駄目だ」
「しかしお父様」
「駄目なものは駄目だ。子供二人では危険すぎる」
「だったら護衛も」
「お前も知っているだろう、王国との戦争があるんだ。あまり騎士を割くことが出来ない。ましてお前の護衛だからよっぽど信用できる奴で無いと無理だ」
「うっ。しかし・・・」
この帝国のライバルは南方に位置するドルト王国。
領土は帝国の半分しか無いが軍事大国のため、戦線は拮抗していた。
父は前線への援軍として明日向かうのだ。
「お父様、お願いします」
僕は頭を深々と下げるが、父は首を振る。
「駄目なものは駄目だ」
そしてそのまま書斎から叩きだされる。
う〜む、どうしたものか。
自室の椅子に座って考える。
「あ、あの〜ルイ兄様。どうしてダンジョンに行かれたいのですか?」
側に控えていたアルスが聞いてくる。
「ああそれはだな、ここから程近いダンジョンの奥にお宝があるんだ」
「お、お宝ですか!」
年頃の男の子だから目を輝かせるアルス。
「そこにある武器とペンダントが欲しいんだよ」
小説内で主人公達が立ち寄ったダンジョン。
おそらく主人公とその周りの男共とのウフフキャハハな展開を作るために出てきたところだ。
だが一応お宝があり、攻撃力が二倍になる剣と魔法の威力が二倍になるペンダントがある。
それでボクとアルスを強化したい。
正直アルスは信用できない部分もあるが、剣を捧げたんだ。
この時代で相手に剣を捧げるということは一生その人に尽くし、裏切らないということ。
アルスが理解してるか分からないが・・・それまでに僕がアルスを洗脳すれば良い。
次の日。
「おい、アルス」
「は、はい!」
「大きな声を出すな」
「はい。どうされたんですか」
僕が何やらいそいそと準備しているのを見て聞いてくる。
「ダンジョンに行くぞ」
「・・・はい!?」
アルスが驚いた表情をする。
「バレないように今から外に出るぞ」
「し、しかし・・・」
「大丈夫だ。今から行って夕方頃帰れば良い」
「ですが・・・」
「お前だって行きたいだろ」
「・・・はい」
「では決まりだ」
僕らは準備をしてこっそり屋敷を出るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます