第5話 魔物
魔法を習い始めてから二年が経った。
「水と風が混ぜ、水流を起こせ、【ウォーター・ウィンガー】!」
魔法陣から大量の水が回転しながら的へと向かう。
魔法にはランクがある。
下から、初級、中級、上級、聖級、帝級、神級とある。
僕は既に上級まで使えるようになった。
同じ年代の奴らは初級までしか使えないが、俺は血筋によって他よりも才能があったのだ。
努力をして報われた。
両親二人とも魔法が得意でどちらも聖級まで使える。
だが、後数年すれば両親を抜かせるまでには来た。
やっぱ選ばれた人なんだよ、僕は。
血筋が全てだ。
小説内でルイが主人公に決闘を申し込んでボコボコにされて負けるシーンがあった。
おそらく努力していなかったから負けたのだ。
ただ、前世と違って才能があると確信した僕は今必死で努力している。
毎日魔法と剣術を勉強している。
全てはこの世界の主人公を潰すために、自分の正義を通すために!
「よし、では遂に魔物を殺す儀式を始めるな」
正義がなんだのほざいていた僕はガチガチに緊張している。
今日は僕の七歳の誕生日。
そんな日に両親は魔物を殺させようとしている。
魔物とは、この世界に存在する悪しき生物。
太古のとある闇魔道士によって生み出された存在であり、危険性がものすごくある。
とにかく何かしら人類に危害を加えてくるから厄介。
ただ力が強いやつもいれば、俊敏なやつ、魔法が使えるやつなど様々いる。
そんな魔物にもランクがある。
下から、下下級、下級、中級、中上級、上級、上上級、悪級、災害級。
小説内でもこの設定で、それぞれの魔物のランクを覚えるのは大変だった。
で、だ。
両親が庭に置いた檻の中から一体の魔物が出てくる。
みずみずしい水色にツルッとした肌。丸々とした体。
「ラージスライムか」
スライムと呼ばれる下下級の魔物の中でも大きな体を持った個体をラージスライムと呼ぶ。
スライムは基本的速い動きをするだけの弱い魔物。
ラージスライムも下級程度であり、僕にとったら余裕だ。
檻から出てきたラージスライムはキョロキョロと辺りを見渡す。
そして俺に気づき、敵と判断して猛スピードで迫ってくる。
「風なる民よ、突風を起こせ、【ガスト・ウィン】」
風の塊が突風となり、ラージスライムを襲う。
が、間一髪でそれを避けられる。
「予想通り」
ラージスライムが避けた先に先回りしていた僕は、腰にかけていた剣を振り下ろす。
ザクッッ―――キュピーー!!
可愛らしい声でラージスライムは悲鳴を上げるが、構わず斬る。
死んだラージスライムの体が消えて無くなる。
しかし、一つの石を残していく。
コア、それが魔物の源だ。
魔力を貯める役割もしており、魔物の心臓と言って良い。
倒すと消えて無くなる魔物の体と違い、死んでも残り続ける。
コアは大きければ大きいほど高く売れることが出来るアイテムなのだ。
そのアイテムとは、魔物が残していくモノのこと。
主に特徴的な部位を残していく。
例えばアルミラージと呼ばれる兎の魔物。
特徴的な一本角を持っており、倒すとコアと共にゲットすることが出来る。
ただ、そういう部位を落とす魔物はあまりいない。
特に高位の魔物が多く、下級のアルミラージが落とすことは異例だ。
「凄いじゃないか、ルイ!さすが我が自慢の息子だ!」
父が駆け寄ってきて抱きしめてくる。
「いいえ、ただ魔物が弱かっただけですよ」
「だとしてもだ。よく頑張った!」
褒められた。
前世ではほとんど褒めてくれなかったあの糞どもと違い、この世界の両親は褒めてくれる。
だから、もっと頑張っていける。
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