魂が肉体に戻れる境界線

花色波紋

魂が肉体に戻れる境界線

 高校を卒業した奏汰は仲が良い友人と2人で一泊2日の卒業記念に旅行へ出かけた


 とある地方の名物やグルメなどを堪能し山の中にある激安ホテルへと向かった

ホテルは和風で値段の割にとても綺麗2人は大満足だった


 大浴場で今日の疲れを癒し部屋に戻った後、布団の上で他愛も無い会話で盛り上がりいつの間にか2人は寝付いていた


 ふっと奏汰は目を覚ます

(電気もTVもつけっぱなしで寝ちゃったのか……)

隣には、友人も寝ていた


 すると足先から太もも辺までビリビリと電気が走るように感じた

(……また金縛りかな?)

奏汰は頻度に金縛りになりやすく金縛りになる瞬間は決まって微弱の電気が走る感覚から金縛りになっていた。


 だか今回は違った


 足先から太ももが、ガクガクと徐々に強い痙攣を起こし始めるそれが段々と上半身へと上がってくる。

 …何かがおかしい

震えが上半身へ上がってゆくに連れTVから聞こえる男性ニュースキャスターの声がスローモーションに聴こえ始めた。


 あまりに不可解な現状が起きだした奏汰は隣で寝ている友人に助けを求めようと声を出す


(……た・す・け・て)


 しかし金縛りになった時同様、声が出ない

だが、奏汰は諦めず声にならない声で助けを求め続ける


(…た・す・け・て)


 その瞬間奏汰の目には、布団の上でガクガク震えている自分自身が映し出された

物凄く険しい顔をして暴言を叫んでいる自分を見て体を霊に奪われ魂が肉体から弾き飛ばされた事を悟った


ヤバい…っと思ったが肉体から離れた魂を再び肉体に戻る術を知らない奏汰は只々奪われた自分自身を見ている事しか出来なかった


 時間の感覚は無いがTVのニュースキャスターの声を聞く限り1秒よりも小さい0.◯秒の世界をまるで◯分の感覚で時が流れる



 周りを見渡すと肉体から約半径3メートル辺に透明だが少し青みがかった境界線らしき物が見えた。その線は今まで見てきたどんな物よりも美しく綺麗で心地よかった。境界線の外側を見ると深い靄が掛かっており、物凄い嫌悪感に襲われ境界線の外側に出たら二度と自分に戻れないように思えた。


 時は経ち境界線ギリギリまで来てしまった

ニュースキャスターの声はずっと

「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」

としか聞こえてこない、それはとても禍々しく悲痛な叫び声に聴こえた


 (あぁもうダメだ)

半ば諦めかけていた時、友人が目を覚ます


「……何処へいった……絶対に許さない……必ずお前を見つけ出し※※※」


 強い念がこもった叫び声を上げている奏汰を見て異変を感じた友人は

「おぃ!!奏汰大丈夫か!?」

奏汰の体を激しく揺するが反応が無い…

「奏汰!おぃ!しっかりしろ!!」

奏汰の顔を殴った瞬間ようやく奏汰の魂は肉体に戻る事が出来た


 「ゲホッゲホッ…ハァハァハァ」

呼吸を止めていた様な息苦しさを感じる


 そして肉体に戻れた奏汰はある女性の怒り悲しみ絶望壮絶な彼女の感情が流れ込み涙を流しながら友人に「助かった ありがとう」と一言伝えた



 そして奏汰はこう思った

(彼女の霊は何処へ行ったのだろうか…

あるいは、まだ自分の中にいて誰かを探しているのだろうか…)


そして

(次にあの境界線を見るときは……)


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魂が肉体に戻れる境界線 花色波紋 @pekoot

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