冷たかった婚約者が、いきなりデレデレになりました!?~本当に貴方同一人物ですか!?~

蒼本栗谷

シルビアとルベライト

「シルビア~! 庭で散歩しませんか?」

「――はぁ?」


 シルビアはいつもと様子の違う婚約者、ルベライトに首を傾げた。

 自分に冷たいはずのルベライトが私の名を嬉しそうに呼んで、しかも散歩の誘い? 


「貴方誰よ。ルベライト様は私に対してそんな反応じゃないわ」

「まあまあ、ほら、散歩に行く? 行かない? どちらですか?」

「得体の知れない貴方と散歩に行くなんてありえない。行かないわ」

「そうですか……残念です」


 ルベライトはシルビアの言葉を聞いてしょんぼりとした様子を見せた。

 それを見てシルビアはなんなのこいつ……と思いながらその場を後にした。


「ルベライト! いる!?」


 シルビアは先程のルベライトそっくりの男が同一人物じゃないと思う為に、普段部屋に籠っているルベライトの部屋の扉を開けた。

 だが、中には誰もいなかった。


「いない……」


 シルビアは部屋の中に入る。ルベライトの机に何かの紙束が置いてあるのを見て、シルビアはそれを確認する。

 そこにはシルビアの情報が細かく乗ってあった。昔の事に最近のシルビアの周りの出来事。


「うっわ、何よこれ……」

「君の事を沢山調べました。そしたら、噂と一致しない事が分かりまして」

「わっ……!? ルベライト!? いつの間に戻っていたのよ……」

「まあいいじゃないですか。細かい事は」


 ルベライトは部屋の中に入り、シルビアから紙束を取り上げる。そして鍵のついた棚に入れてからシルビアに向き合い、笑った。


「散歩が駄目なら、食事はどうですか? それは、ここでゆっくりしていきます?」

「……あんなに私に冷たくしておいて、今更態度変えてもそう簡単に頷くと思う?」

「思いませんね。ですが、シルビアは頷いてくれますよ」

「はぁ?」

「愛してます」


 ルベライトはシルビアの腰を掴み引き寄せて口説く。シルビアはそれに一瞬頭が真っ白になるが、すぐに顔を赤らめ始めた。


「な、なななな!?」

「シルビアは口説かれるの慣れていませんよね? 愛してます」

「や、やめなさい! そんなので絆されると思って!?」


 ルベライトから離れようとするが、ルベライトは逆に引き寄せる。


「逃げないでください。かわいい。綺麗。愛してる」

「ひっ……やめ、やめなさい……」

「嫌です。シルビア、私を見て」

「い、嫌よ……」

「シルビア」


 じっと見つめるルベライトにシルビアは視線を逸らし続けるが、状況が変わらないと分かったと同時に「ああもう! 分かったわよ! 見ればいいのでしょう!?」とルベライトに視線を合わせた。


「ふふ、ありがとうシルビア」

「なんなんよ……」

「今までの私の行いを許してくれますか?」

「……そう簡単に許すと思う?」

「そうですよね。私は今まで君に冷たくしてきた。でも、これからは沢山愛しますよ」

「信じられないわ」


 きっと睨みつけるシルビアにルベライトは「信じさせますよ」と笑ってシルビアを横抱きにした。


「ちょっと!?」

「食事をしに行きましょう」

「お、降ろしなさい! 食事に行くぐらい一人で行けます!!」

「たまにはいいじゃないですか」

「ルベライト!!」


 顔を赤らめるシルビアにルベライトはかわいいと思いながら、降ろすことなく部屋から出た。



 その後ルベライトは言った通り、シルビアに毎日愛を囁き口説いた。

 それにシルベアは段々と頷くようになり、今ではすっかり絆されてしまった。


「貴方、本当に同一人物なんでしょうね?」

「確かめて……みます?」

「っ……お断りするわ!!」


 そんな日常が、いつまでも続いた。

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冷たかった婚約者が、いきなりデレデレになりました!?~本当に貴方同一人物ですか!?~ 蒼本栗谷 @aomoto_kuriya

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