ドロマミレガサ DoroMamireGasa

イズラ

第1章 傘という屋根の下

第1話 生残式

――――――キーンコーンカーンコーン







――――キーンコーンカーンコーン







――キーンコーンカーンコーン







キーンコーン――――――
















 大音量のチャイムが学校中に鳴り響いた。



 私を含め、教室にいた全員が即座に耳を抑える。



「 「 「 ――――! 」 」 」



 教室内の悲鳴もかき消すほどの爆音。



 教室に入って来た束の間、私は 耳を塞ぎながら その場に屈み込んだ。



 手をすり抜けて 鼓膜を滅多刺しにするような”音”は凶器と言うよりは”兵器”だった。



 何とか この苦しみから逃れるすべは ないのかと必死に頭を回すが――



 回すが。



 体の力が抜けようとしていた。








――意識が飛ぶ直前、あることに気が付いた。



 「――!」



 脳が破壊されそうな中で必死に思考したのだ。



 こんな状況じゃなきゃ、多分すぐに思い付いている。



 サッと立ち上がり、耳を塞いでいる片手をそっと離す。



 途端に耳に容赦なく ぶつかるチャイムの音。



 スピーカーは頭上にあったため、とんでもない音波が 私の耳を破壊しようとしていた。



 震える手を伸ばし、”つまみ”に手を掛ける。



 そして、思いっきり左に回した。



 『 カチッ 』



 その瞬間、教室内に響き渡っていた 音の嵐が止んだ。








 しばらくは皆 沈黙していた。


 他の教室では まだ爆音チャイムが鳴っているようだった。


 ループしているようで、一向に止む気配はなかった。







 本当に長い間、私たちは動けなかった。


 体感で数時間くらい経った頃、ようやく一人が口を開いた。


 「生きてる」



 掠れ切った声だ。


 その直後、クラスメイトたちは 一気に力が抜けて 大半の者が床にへたり込んでいた。


 私も崩れ落ちるように倒れ、床にうつ伏せ状態となった。


――生きてる


 今はただ、それだけの幸福が 私を満たしていた。




 このとき私たちは知らなかった。




 静まり返った校内に、ただ一教室だけ。


 『1年D組』


 息をしていたのは、ただ一教室だけ――――。







――――――第1章 傘という屋根の下

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