愛されたがりのアリカは、愛したがりの王子に溺愛されます!

蒼本栗谷

需要と供給の一致

「アリカぁぁ~~~いつもかわいいね!! 大好き!」

「ルーク様っ! もう! 私がかわいいのはいつもの事ですわっ!!」


 王宮の一室で二人の男女が抱き合っていた。ルークはいつものようにアリカを褒める。アリカはそれに不満を訴える事無く顔を赤らめて笑う。

 二人は夫婦だった。元々は政略結婚で結ばれた二人だったが、訳があって今はお互いデレデレになっていた。

 ルークは愛したい性質だった。だが、そのせいで女性運がなかった。

 

 ――あんなに褒めてもらえるのは嬉しいけど、私は彼に相応しくない。ずっと褒められ続けるなんて、恥ずかしくて耐えられない!


 ルークと関わった女性は皆そう言って顔を赤らめてルークから逃げて行った。ルークは、何故逃げるのだろう? と疑問に思っていた。

 本心からの言葉だと分かっているからこそ、関わった女性達は皆、その純粋さに見合う人間になれないと悟った。


「アリカは綺麗な蜂蜜の目だね~~~~。かわいいね~~~!!! 舐めちゃいたい!」

「舐めるのはよしてくださいな! でも、ルーク様に捧げるのも悪くない……?」


 アリカはルークの言葉に真剣に悩みだす。彼にもっと愛される為なら、目を捧げるのも……! と思った。

 アリカは愛されたい性質だった。愛されたい欲が強く、男性運に恵まれなかった。


 ――愛し続けられない。俺は耐えられない。君に見合う人はいないんだろうね。


 アリカと関わった男性は皆疲労した状態で言った。アリカは愛すぐらい簡単でしょう? と疑問に思った。

 欲が強すぎるアリカに、関わった男性はアリカの欲を支えきれない事を数日過ごしただけで察した。

 

 そうして時が過ぎ、二人は両親の計らいで出会った。


「か――」

「か? ルーク様?」

「かわいい~~~!!!! 僕よりちっちゃい!! え、この子と結婚できるの!?」

「か、かわいい……? ……んふふ、そうでしょうそうでしょう! もっと褒めてくださっていいのよ!! ルーク様!!」


 出会って数秒の出来事だった。ルークの言葉を始めに、二人は愛し合った。

 ルークはアリカの至る所を褒め、アリカはもっと褒めろと要求した。それにルークはこたえ、もっと褒めた。

 そうしてあれよあれよと結婚の話が進み、今に至る。


「アリカの声はかわいいね~。聞いてるだけで眠くなっちゃう!」

「ルーク様こそ、よく眠れる声をしておりますわ。その声含め、愛してます」

「僕だって愛してるよ! 世界中の誰よりも!!」

「ルーク様っ! 本当貴方って最高ですわ!!」


 二人は暇さえあれば愛し合った。外でも、中でも、二人が合えば愛し合う。それが二人の日課だった。

 相手の目なんて関係ない。愛の前では無力。

 

 そうして二人は今日も、愛し合う。

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愛されたがりのアリカは、愛したがりの王子に溺愛されます! 蒼本栗谷 @aomoto_kuriya

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