第19話

 ザルノフ率いる突入チームは、着々と施設を制圧していた。


 施設の周囲を巡回警備する見張り員らに気づかれないよう素早く施設に肉薄した4人は、ドアの前に立っていた警備員を素早く射殺する。


 減音器が取り付けられた拳銃の発砲音は、森のざわめきに吸い取られて周囲に響くことはなかった。


 ライツが死体のポケットから弾薬を引っ張り出して、他の3人に投げ渡す。ザルノフはそれを受け取りつつ、ドアを蹴破った。


 室内にいた警備員たちは、突然吹き飛んだドアに虚をつかれる。


 1秒に満たない動揺。もし突入してきた相手が普通の犯罪者であれば、大した問題ではなかっただろう。だが相手は特務機関の精鋭だ。


 1秒という長い時間は、廊下にいた警備員が全員射殺されるのに十分すぎた。


 サリアが短機関銃を構え短く連射する。警備員たちは頭に一発ずつ弾丸を叩き込まれて倒れた。


 突入チームは拳銃を構えたザルノフを先頭に廊下を進んでいく。床に広がった血溜まりを踏む微かな音が、静かな廊下に響いた。


 ザルノフたちは全員がそれぞれ別の方向を警戒しており、隙が全く無い。


 運悪く鉢合わせた警備員は、そのほとんどが自身の武器を使うどころか、構える間すら与えられずに射殺された。


 T字に分かれている廊下の突き当たりで、ザルノフが片手で拳銃を構えたままハンドサインで指示をする。


 彼らはザルノフ、ガーランとサリア、ライツの2手に分かれて、施設の捜索を開始した。


 廊下の警備員を排除しつつ進み、まずサリアとライツが第一目標を発見した。


 管理室。主に施設の予算管理や保守点検を統括する部屋で、施設の設計図もここにある。まず尋問室や牢獄がどこにあるのか分からないと、カヤを探しようがない。


 ライツが施錠されたドアの鍵を拳銃で吹き飛ばし、軽く押し開ける。即座にサリアが短機関銃で弾幕を張った。


 パソコンの並べられた事務所で作業をしていた情報調査室の職員は、次々と射殺される。


 血がディスプレイに飛び散った。


 2人は敵の全滅した室内に入ると、パソコンを覆うように倒れた死体をどかしてキーボードを叩く。


 ほんの数秒で、施設の設計図がディスプレイに表示された。


 ライツはそれに素早く目を走らせる。


「尋問室は地下2階です。おそらく、そこにカヤさんもいます」


「了解」


 ライツの無線連絡に、目の前の敵を射殺したザルノフは短い返答を返した。


 短機関銃で武装した警備員が、こちらへと迫ってくる。


 静かだった廊下が、徐々に騒がしくなってきた。


「流石に気付かれたか」


 ザルノフは拳銃を腰のホルスターに戻すと、自身の散弾銃を構えた。

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