水底
フェリーの甲板に図形を描く。それは名状しがたき幾何学模様で、常人が見れば底知れぬ恐怖と嫌悪感をおぼえるものであった。しかし、彼にとっては、何物にも代えがたき神聖なものであり、心がだんだんと澄み切ってゆくことを実感していた。
彼は、おごそかに、古文書に記されていた一節を奏じはじめる。
「かけまくも
なぜ今までかくも神聖な世界の
「
「
そのとき、海面にはおぞましき眼光が数あまた浮かび上がってきた。常人であればたちまちに気が触れる光景であったが――それらこそが、彼の待ち望んでいた
ああ! おいでくださりましたか! だごおむさま! はいだうらさま! そして――
無上の歓喜と幸福を感じながら、最後の一節を唱える。
「――
彼が甲板から身を躍らせると、瑠璃色の
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