詩「第一回フレーバー選手権」

唯六兎

第一回フレーバー選手権

世界中からあらゆる香料が集い

第一回フレーバー選手権は開催された

花の類から果物の類まで

優勝候補の龍涎香や麝香は

ついぞ外の世界を見たことがなかったから

すぐに怖気付いて逃げ出してしまったけど


バラやローズマリーは奮闘した

マンゴーの売り子も輝いていた

ドームいっぱいの討論と歓声が満ちて

ついに夜の八時を回ったとき

その中でただ一人

ラフレシアがいびきをかきながら夢に入る


穏やかに鬱血した花弁から

嗅いだことのない歪な臭い

会場はたちまちに狂い

花の類は目一杯に花弁を広げ

果物の類は唾を吐き、匂いの上書きを試みる


混濁したアロマが会場に満ちてゆき

息苦しくなった運営はついに

ドームの天蓋、つむじを開けた

頭蓋の狭間からポクポクと浮上したアロマは

やがて夜空の雲になり

小雨を降らせ

立ち所に全ての匂いをはたき落とす


しばらくして選手権は終わりを迎えた

厳密には中止になったのだけれども

それでもラフレシアはたった一人

雨に打たれながら

穏やかに寝ていたという

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詩「第一回フレーバー選手権」 唯六兎 @rokuusagi

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