目覚め
……呪われた子供……
……お前のせいで家族が……
……この村はもうお終いだ……
……世界の敵……
……お前なんか……
……お前なんか……
……お前なんか……
……お前なんか……呪われて死んでしまえ!
ネクロシスはゆっくりを目を開けた。
黒い前髪が視界の端に揺れる。
(ここは……どこだ?)
記憶があいまいだった。
でも、ひどく悲しい夢を見ていた気がする。
体が動かない。
筋力が衰えてしまっている。体を動かすとかさりと音がした。
ベッドかと思われたが、どうやら木の葉のベッドで眠っているらしい。
「ここは……?」
「ひめしゃま! おとこのこがめざめましたぞ!」
「あっ! ほんとだ!」
「まったく、おねぼうさんですな!」
周囲で声がする。まだ身を起こせない。全力で頭を回すと彼の目に真っ白な髪が揺れた。
(…………!!!)
まるで雪のような――ネクロシスは見惚れてしまった。そのあまりにも綺麗な白い髪と白銀に輝く角――次に目に飛び込んできたのは紅の瞳。赤き宝玉。
(なんて……綺麗な……)
ネクロシスは頬が赤くなっている自分に気づいた。同時に涙を流していることにも今更ながらに気づく。
「こやつ、ひめさしゃまのうつくしさにないておりますぞ」
そうではないと言いたかったが言葉が出なかった。ひゅーひゅーと力ない息だけが口から洩れる。
「むりをしないで……」
ネクロシスの頭にそっと手が添えられる。
久しく感じたことのない感覚。その手のぬくもりにネクロシスは泣きそうになった。
「少年が目覚めたというのは本当か?」
「ととさま! しずかにしてください!」
「王よ! 静かにお願いします」
「…………すまぬ…………」
アメリアとリーフリンダに注意されしゅんとうなだれるイグニス。
「容体は安定していますが、今は体力の回復が最優先です」
リーフリンダはネクロシスとイグニスの間に立つように立ちふさがった。
ネクロシスは状況を把握することができなかった。目の前の少女が誰なのか、今自分がどういった状況なのか半濁とした意識で考えてみるがぼんやりとしたまま答えは出ない。
「休みなさい」
リーフリンダの言葉が静かに響く。
「ゆっくりとでいい。まずは体力の回復が先です」
ネクロシスは言われるがままに目を閉じた。その途端、強烈な眠気が襲ってくる。
(……伝えなければ……)
ぼんやりとした意識の中で静かに思う。
(この宮殿は……崩壊する……)
ネクロシスの意識は闇に包まれていった。
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