第58話 助力
しかし、そんな秋冷の思惑は
翡翠は銀漢宮の一階回廊で、呼び出された部下とその他の護衛兵数人と矛を交えていた。
――どうしてこんなことにっ……!
自分を呼びだした部下と護衛兵たちは正規の人間ではなかった。
『翡翠殿。突然で申し訳ないが、貴殿の御命を頂戴する』
声色を変えて、部下と思しき男性はいきなり武器を掲げて襲ってきたのだ。
護衛兵専用の衣服に身を包み、翡翠の部下を
――一対多数では分が悪すぎる……!
それも、相手は手練れだった。彼らが持つ武器は剣を始め様々だが、特に暗器使いが多い。繰り出す攻撃の威力はそこまで高くないが、体の動きが異常に速い。それゆえ先制を許してしまい、これまで培ってきた反射神経をもってしても
「白琳様っ……!」
先ほどから外も騒がしく、苛烈な怒号が間断なく聞こえてくる。もしかすると、和平反対派による暴乱が勃発したのかもしれない。
何とかして現状を打破し、白琳の元に駆け付けたかったが、如何せん敵一人一人の実力が一兵卒数人分に相当する。
「くそっ!」
理玄との試合と同等、あるいはそれ以上の苦戦を強いられ、翡翠は己の未熟さを痛感しつつも必死に迫りくる猛攻を捌く。
「翡翠殿!」
そこで、聞き覚えの無い声が
振り返ると、そこには朽葉色の髪が目を引く男性が剣を握りしめていた。
「貴方は⁉」
「秋冷と申します。理玄様の命で
外朝で兵たちを全員昏倒させた後、秋冷たちは内廷まで一気に足を進めた。だが、そこでまた新たな兵たちと出くわしてしまい、部下たちが秋冷だけでもと彼らの相手を一手に引き受けてくれた。そして銀漢宮に入り、今に至る。
「偵察って……」
「詳しい話は後程。今はここを切り抜けることだけを考えましょう。白琳様とご一緒だったのでは?」
闖入者も始末してしまおうと、敵方が秋冷に牙を剥く。しかし、彼はそれをいなしながら翡翠に問うた。彼は苦悶の面差しになって答える。
「……この者たちが部下を騙って私を呼び出し、白琳様と引き離したのです」
「なるほど。そうでしたか」
彼らは黒幕の手駒ということですね。
すう、と秋冷の瞳に翳が差し、氷のような冷たさを帯びる。背筋が凍るような冷気と威圧感に敵方も身構えた。
「早くこの方々を
「はい」
秋冷と名乗った金桂からの使者には色々と聞きたいことがあるが、今はそんな暇は無い。兎にも角にも助太刀に来てくれたことは
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