エッセイ・Bill・Evans・TrioーWaltz・For・Debbyについて 

柴田 康美

第1話 Waltz For Debbyについて

  実は、この曲のDebbyというところをBabyと間違えていました。ひとつはぼくが英語が苦手ということもあるし天下のあわてんぼう将軍ということもある。ほかのことでもけっこうぼくはこういうぽっかりミスが多くてこの間も1日にそれぞれ違ったひとにそれぞれ違った場所で遇って話したのにはじめましてと挨拶して相手にけげんな顔をされたことがある。どこかあたまのネジがとんでいるかゆるんでいるかサビているかそのどちらかだとおもう。でもそんなあたまに苦手でもなんでも人名なんだから英語で書かなくてはとドリンク剤でも飲んでほかに好きな曲を書く。ArtBlakeyのA Night in TunisiaとSonny RollinsのBags'Groove(天からの声で訂正しました)もいいなぁーと何度もため息がでるのだけれどどうしても古いレコードプレーヤーでDebbyをかけヘッドホンをいつのまにか着けています。ヘッドホンは微細な音まで吸い上げて音域がひろくなってとても聴きやすい。ノイズも音楽のうちという許容量が広い考えでチリチリもお友達だとおもって聴いています。とくにぼくの場合押し入れのなかに盤を積み上げて保存してあり周りは水着から団扇、スリッパ、カーペット、釣り竿、合羽などどうしてこんな物体がここにというモノがごちゃごちゃにある。当然レコードの鮮度はよくない賞味期限はとっくに気が遠くなるほど昔に過ぎている。


Evansはクラシックをジャズに取り入れたピアニストで知られており印象派と呼ばれているのだけれど同じリズムが規則正しく保たれてゆくロンド形式であるラヴェルのボレロに似ているなぁとつくづく思うことがある。これはまったくの私見で間違っているかもしれません。出だしはピアノのバラード風そぞろ歩きからベースのつま弾きで終始していたものがある段階で休んでいたドラムスのステックのバサッ!という一撃からセッションに再び加わってくるピアノと渾然一体となり軽快な旋律とテンポがしだい高速に変わってゆくのはいつもとても興奮させられる。単調なペースと加速度的なビートが繰り返し繰り返しうねる波のように流れてゆくあるいは強くあるいはか細く聴く者にじんわりしみてくるのであります。


 それで音源はどうしてるのか。よくぞ聞いてくださいましたね。なんといってもひとつめの古いプレーヤーは音がきわだっている。ハリを落とすと音が急におおきくなる高いアンプをくッ付けてある。ふたつめは少し新しめのプレーヤーはそこそこふつうの音です。これらを必要なときに引っ張りだしてくる。そしてみっつめのミニコンポはMDやCDやカセットテープを再生するとき役立ちます。音が比較的いいし音量を調節することができるので便利です。MDにはiTunesからダウンロードしたお気に入りのMusicがいっぱい入っている。2024年リスナーのドアを開けるなりすぐ音に浸りたいむきにはレコードプレーヤーではなく音楽の配信サービスをするAppleやLine、Amazon、Spotify、村上RADIO、などなどYouTubeでもなんでもネット上で音楽は宇宙のチリのように我々の回りを廻っていいるからご安心いただきたいとNASAから報告があった。なんていうのは真っ赤なウソでいいかげんでたらめ書いてしっかりしたこと書かないと今にぜんぜん信用されなくなってきっと路頭に迷うことになりますね。


 ところでEvansはこの曲を結婚してしまう姪のDebbyに贈ったといわれています。うらやましいィー。作曲できるひとはそんな洒落たことができていいね。文章を書くひとはどんなものを贈るのか。短編小説かエッセイか童話か短歌か俳句か。やはり結婚式のときに司会者が読む出席者を泣かせるお手紙になってしまうのかな。でも、あれ、あとあとになって夫婦ゲンカしたときカミサンからほれと言ってソファーの上に出されでもしたら男はかっこ悪いよなぁ。はずかしいよなぁー。女はそういうモノけっこう大事にいつまでも持ってるものなんだよ。男はケンカした原因なんかとっくに忘れているのに朝コーヒーでも飲みながらあれのことを突然いわれると熱い濃い液体がつっかえて口から吹き出そうになる。なんでこんなくだらいこといつまでも覚えているのかまったく女の記憶力にはいつものことながらまいる。

 

 そのくせゴミ出しの日とか町内清掃の日なんかコロッと忘れてデパートへ買い物にいっちゃうんだよね。そんなこと急にされたらこっちも困るんだよ。ぼくだってレコード聴かなくちゃならないし東スポを買いに行かなくちゃならないし公園の池の鯉にパンくずを与えなければならないしソバ屋のまえに座っているシロの頭をなぜなくてはならない。男にもいろいろ大切な用があるんだよ人生には。そういうとゴミ出しはおんなのどうしてもの仕事じゃないたまにはおとこもやってみたらいいという。みんなどこの旦那さんも出しているというんだね。みんなと言われるとひじょーに弱いんだね。とにかくみんなだから。やらないぼかぁ犯罪者みたいになる。



              (了)

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

エッセイ・Bill・Evans・TrioーWaltz・For・Debbyについて  柴田 康美 @x28wwscw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る