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「ねえ、好きな女の子に酷い事しちゃったら……」

「私だったら……『許さん、一生憎み続ける』と言われた方が、気が楽かも知れないな……」

 王宮に戻れなくなった理由の1つについて、ラートリーに相談してたら、そう言われた。

「何をすれば相手が許してくれるか判らないような事をやってしまったのに、その相手が許してくれたなら……一生、『ひょっとしたら、形だけの許しじゃないのか?』と悩み続ける事になる。私は、そんな人生は耐えられそうにない」

 ただ……胃が痛くなるような時間だけが過ぎていく。

 明日から……何を見ても綺麗だと思えず、何を食べても美味しいと思えない……そんな日々が続くんだろうか?

 ラートリーが、ボクに近付き……抱きしめてくれる直前で……彼女の腕の動きが止まる。

「どうしたの?」

「すまない……あやうく、自分で自分を許せなくなるような真似をする所だった……」

「えっ?」

「好きな相手の心が弱ってるのに付け込むような事は……するべきじゃない……。なのに……」

 ラートリーは、そう言って、背中を向ける。

「ま……待って……」

「本当にすまない。自分を押さえ続ける自信が無い。しばらくは、君の前には現われない事にする」

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