(2)

 昼食が終ると、ボク達は王宮の武器庫にやって来た。

 偽の王子様が弓術の試合に使う弓を選ぶ為だけど……。

「阿呆かッ‼」

 早速、ラートリーの怒号。

「何がだッ?」

「それ、歩兵用の弓だろッ?」

 たしかに、偽の王子様が選んだのは……大き目の弓。

 馬の上で扱うのは難しそうだ。

「それが何だ?」

「『試合は草原の民のルールでやる』……それを了承したのはお前だろうがッ‼」

「だから、何を言ってる?」

。あと、

「え……えっと……草原の民の弓は……いしゆみ?」

「いや、いしゆみじゃない弓だ」

「両手使う必要が有る弓?」

「普通は両手を使うな」

「弓を射る時、手綱は握れない?」

「手が3本以上有る人間が居れば話は別だが、普通の人間は握れないな」

「弓を射る時……馬はどうやって?」

 ぽんぽん……。

 ラートリーは自分の両方の太股を叩く。

「草原では、子馬の頃から、馬を足の締め付けが手綱の代りになるように訓練してるし、逆に人間も、手綱で馬を操る方法だけじゃなくて、足の締め付けで操る方法を身に付けてる」

「え……えっと……それ、身に付けるのに、どれ位かかる?」

「早くて半年……馬も人間も……」

「……」

「あと、もう1つ問題が有る」

「これ以上、何だ?」

「草原の馬は、子馬の頃から走り方を矯正されてる。草原の馬の方が、こっちの馬より走る時の振動が小さい。慣れた馬でも、こっちの馬を使うと弓術の試合では不利になる」

「……」

「で、ルールだ。的に向かって走りながら前方に射る。的から遠ざかりながら後方に射る。的から見て横方向に走りながら射る。その3つで1試合だ。的の中心により近い場所に当てた方が一本取れる。で、先に2本取った方が勝ちだが、どの順番でやるかは格下と見做されてる方が選べる。多分、相手が格上扱いだろうから……弓術で勝目が有るとするなら、どの順番でやるかだ……どうした?」

「あ……草原の民から日程の通達が有りました。一週間後だ……どうしました?」

 そこにやって来たのは女騎士のウシャスさん。

 とりあえず……。

 偽物の王子様の心は折れかけてるようだった。

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