(3)

 そして、日が暮れる頃には……早めの夕食が始まった。

 王様一家と、隣国の王子様が同じ席について……。

 グゥ〜。

 護衛役のフリしてウシャスさんの横に立ってるラートリーがボクの方を見る。

「音、大きかった?」

「ま……まぁ……」

 食卓の反対側には……隣国の王子様の護衛が立っている。

 食卓は……変な雰囲気。

 まぁ……隣国の王子様は「王女が偽物かも知れない」と思ってるみたいで、お嬢様も、その可能性が有るのを知ってる。

「あ……しばらく、若い2人だけですごすのも良いかも知れんな……」

 食事が終ると王様はそう言って……「えっ?」っと云う表情かおになる第2王女様。

 王妃様は、第2王女様の手を取ると、半ば、無理矢理気味に席から立たせ……。

 シ〜ン……。

 沈黙……。

 やな感じの時間だけが過ぎてく。

 ええっと……。

 ボクたちの晩御飯はいつなんだろ?

「お……お前は……誰だ?」

 隣国の王子様が、ようやく口を開く。

「えっ?」

「何故、一国の王女が、あんな時刻に、あんな場所に居たッ⁉」

 ラートリーは頭をかく……。

 そして……小声で……。

「どうやら……私は、自分で思ってたより遥かに頭が悪いらしい」

「へっ?」

「私は……誰かを罵倒する時こそ、なるべく頭を使うようにしてるんだが……あの王子様の発言には、馬鹿丸出しの返答しか思い付かん」

「何?」

「お前が言うな」

 ところが、その時……。

「すいません、緊急事態が起きる可能性が有りますので……皆様、謁見の間の次の間にお越し下さい」

 いきなり駆け込んで来たのは……王宮内の伝令係。

「何が起きた?」

 女騎士のウシャスさんが、そう訊いた。

「そ……それが……草原の民の代表が、国王陛下に緊急の謁見を求めまして……」

「断わればいいだろう」

 そう言ったのは、隣国の王子様。

「それが……我が国では、初代国王に仕えた『建国八功臣』と呼ばれる8人の武将と大臣の嫡流本家の当主に当たる子孫には、いつでも好きな時に国王に諫言を行なう特権が認められています。そして、我が国の国王に臣従を誓っている東の草原の民6部族の内、『グリフォンガルーダ』の部族の族長は、建国八功臣の1人、右宰相アシナの嫡流本家の当主が兼ねる事になっています」

 女騎士のウシャスさんが、隣国の王子様に説明する。

「おい……それ、食事中でも?」

「はい」

「風呂入ったり、寝てる時でも……?」

「他国の方からすれば……それ以上に非常識な場合でもです」

「大体、緊急の要件とは何だ?」

「それが……良く判らないのですが……」

 連絡係も狼狽してるようだ……。

「ミトラ王女殿下の御結婚に関して異議を申し立てているようで……」

「何ッ? 私以外の誰と結婚させろと?」

「え……えっと……タルカン・バートルとか……申す名前の男のようで……」

 ポカ〜ン……。

 ウシャスさん、サティさん、ラートリーが……ポカ〜ンって表情かおになった。

「ど……どうしたの?」

「タルカン・バートルなんて名前の男は居ない。そもそも……タルカン・バートルってのは……人の名前じゃない」

「へっ? どう言う事?」

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