(15)

「えっと……その筋書を考えた奴は……マズい薬でもキめてたのか?」

 ボクと魔法使いさんの説明を聞いたラートリーって女の子は、そう言った。

「あのな……誰が考えたと思ってるんだ?」

「誰?」

「えっとな……私とウシャスが考えて……それを王様と王妃様が修正して……」

「なんだ。大勢の手が加わってる内に、訳が判んない代物と化しただけか……。どうせ、大臣とかのエラいさんも口出ししたんだろ」

「……」

 図星らしい。

「あのさぁ……王家の先祖の遊牧民に伝わる、あの昔話、そのまんまの事態を引き起す気か?」

「どう云う昔話?」

「昔々……遥か東方の天まで届く万年雪に覆われた大山脈の南の麓に、2つの国が有った。1つは、その地方で名門中の名門とされる王家が治める小国。もう1つは、新興の大国。で、大国の王は、小国の王に『貴方の国の王族の娘を妻に迎えたい』と申し出た」

「ああ、なるほど、良く有る政略結婚か……」

「だが、小国だが気位の高い方の王様は、大国の王様が遣わした使者の無礼な態度に怒って、ある嫌がらせをする事に決めた」

「何?」

「王族の1人と奴隷の間に生まれた『王族の血は引いてるが、身分は最下層の奴隷』の娘を王族の娘と偽って、大国の王に嫁がせた」

 えっ? いや……それ……。

「素晴らしい発想アイデアだな……。一から十まで吐き気がするほど胸糞悪いって、些細な欠点に目を潰れば……」

「あ……あの……オチは……まさか……その……」

「当然ながら、大国にバレて、戦争になり、小国は攻め滅ぼされた」

「ねえ、お姉ちゃん達さあ……戦争再開したいの?」

 ヴァルナって女の子は……溜息をついて、そう言った。

「マズいと思うか、やっぱり?」

「こっちの国の国力なら……神聖王国を名乗ってる蛮族どもを簡単に滅ぼせるだろうけど……でも『勝ってから泥沼が始まるのが確実』。それが、講和した理由じゃなかったっけ?」

 う……完全にマズい事になりそうだ……。

 で……でも……。

「あ……あの……」

「えっ?」

 ボクはラートリーっての手を握り……。

「ボクは、国がどうなるかなんて、良く判んないけど……ボクのお嬢様だけは守りたいんです。協力してもらえますか?」

「え……えっと……は……はいッ♡」

「あのさ……絶対、その内、悪い女に全財産騙し取られるよ、ラーちゃん」

「構わない。一生、騙し続けてくれるなら」

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