狂人の、狂人による、狂人ための日記
相田田相
第1話 穴があったら入りたくない
寂寞たる世界に、唐突千万、驚く暇も与えられないほどの速力で虹色が降った。とてもチャーミングで、キュートで、魅力的な可愛い地球外生命体が、チャージビームで我々を窮地に追い込んだ。
しかし、可愛いは正義である。私たちは彼らの前に踊りながら現れては、颯爽と辞退するの繰り返し。むろん、私も一員として見るも無残に消し飛ばされた。
寝覚めの朝は寒かった。私は天に召されたはずであるが、この起床は、当然のごとく訪れた。ならば私はそれを愛想よく受け入れるだけだ。取り敢えず起き上がり、地面と足を接吻させると、妙な音がした。不安に思うことなく目をやれば、ピザにきゅうりを合体させた足がある。足と呼べるのかは兎も角、その不安定極まりない足は、しかし、以前の骨と肉で構成されたものよりも、はるかに走りやすそうであった。何処かを駆けたいという、馬に似た気持ちが胸中を圧迫し、いち早くそれに応えるため、窓から飛び降りたのは良いものの、そこがマンションの最上階であると知っていたならば、と深く深く感じた。
けれども全ては杞憂に満ちていた、地面に着地できた。やったあ、と喜びの舞いに興じる。が、またもや足に違和感がある。もしや、と不安に苛まれている体裁を繕いながら、見ればそこにはごぼうがあった。ピザでなくごぼうがあった。地中に埋まっているゆえ、動けない。
「あらまあ」
このとき彼は始めて、不安というものを感じたのであるが、しかるに表情は笑みに笑みを重ねた笑みによって、如何にも幸せを謳歌している令嬢然としていたけれど、道行く人間は彼を彼と思わず、大根だと思っている風な素振りを見せつけて、終いには引き抜こうとするのである。
「今日は大根でたこ焼きのロールキャベツを三人前作れるぞ」
そう言いながら、彼を引き抜こうとした聡は警察に逮捕された。私は満足。
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