13人のリンフォン融合型怪人

筆開紙閉

全ての終わりまであといくつかの夜

 日本の治安は年々悪化し、決定的事態を目前としていた。

 例えば、表向きは芸能プロダクションとして知られる秘密結社『終末時計』は人間と呪物・怪異との融合による怪人を製造している。僕はそいつらに怪人にされた。

 下校中に怪しげなハイエースから出てきた覆面の連中に誘拐されてね。

 僕こと紅世終グゼ・シュウは、一般女子高生だぞ。誘拐に抵抗できるわけないだろ。

 手術台から起き上がる。手が黒い甲殻に覆われているし、顔や身体全体も元の形とは違う感触だが、特に驚かないな。

 まるで予め知っていたような納得感がある。これもまた僕の姿だと自然に思えた。

「……お前はリンフォン融合型怪人インフェルノ、その零号になった」

 腹部から出血している白衣の叔父さんが手術室に入り込んできた。叔父さんは僕の親代わりであり、何処で何の仕事をしているか知らない。

「なんで叔父さんがいるんだよ。怪我しているし」

「全ての終わりまで時間が無い。どんな手段を使っても新藤千里を殺せ。絶対に復讐しろ」

 なんで僕が幼馴染の千里を殺さないといけないんだよ。復讐ってなんだよ。

「質問に答えろよ」

「リンフォンに封じられた彼らの記憶が復讐への道程ルートを教えてくれるだろう。さらばだ」

 叔父さんはそう言い終わると上下二つに別れて死んだ。明らかにどうにもならない出血だった。

 既に致命傷を負っていたけれど、僕を助けるために無理をしていたらしい。

 後から彼らの記憶によって知ったけど、叔父さんがあのとき無理をしなければ僕は洗脳され、『終末時計』の手駒になっていた。

 そもそも僕を改造したのは『終末時計』の研究者だった叔父さんだったらしいんだけどね。

 僕はこうして『終末時計』への復讐とついでに人間の自由意志の為に戦う怪人になった。

 これが西暦二千十三年の冬の夜に起きた最初から何番目かの出来事だ。

 しかし本当の始まりは何処にあるのだろう。僕の双子の妹が行方不明になったときだろうか。それともビッグバンによってこの宇宙が誕生したときか。

 


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