第12話 和解

翌日以降、また練習の日々が始まったが、僕は部活の練習以外にも、帰ってから素振りや筋トレに精力的に取り組んだ。

 美春も当初志望していなかった進学の為に遅れを取っていた勉強に取り組み始めた。

 やがて春の足音が近づくにつれ、僕達の努力は身を結んだ。

 美春は定時制高校に合格し、春からアルバイトの傍ら通い始めた。

 僕は秋までとは見違える程筋力が増え、スイングにも鋭さを増した。

 フリーバッティングでも打球が面白いように内野の間を抜けたり、外野の頭を超えたりするようになった。

 手応えを感じる中、春季大会のメンバー発表が行われた。

 僕はベンチ入りを飛び越えて背番号三が与えられた。

 帰宅して、鞄に大事にしまっておいた背番号を取り出した。

 掌に乗った背番号三は軽い生地の筈だがずっしりと重く感じられた。

 僕は背番号三を縫い付けてもらうために母の元に持参した。

 背番号三を見た母は始め大きく目を見開くも、頬を緩めて無言でグッドサインを作った。そして徐に縫い付け始めた。

 僕は何故かその過程を目に焼き付けたくなったので正座でその姿を眺めた。

 やがて背番号が縫い付けられたユニフォームが完成した。

 試しに着用し、鏡に背番号を映した。

 背中に刻まれた三の文字を見ながら秋の悔しさ、冬場の忍耐を思い出し、必ず試合で活躍する決意を固めた。

翌日の練習を終えて、いつもの道を走っていたところ、背後から南場が追いかけてきた。

 「久志、今日は一緒に帰ろう。」

 「あぁ…まぁいいけど。」

 秋以来に二人で自転車を漕ぐが、どう話したら良いか分からず、二人の間には長い沈黙が流れた。

 近所のコンビニを過ぎた辺りで南場により沈黙が破られた。

 「久志、秋はごめん。言い方も悪かったし、お前の気持ちに寄り添えていなかったと思う。」

 「いや、あの時はただただ勝手にイライラしていただけだよ。本当に幼稚だったと思う。俺の方こそごめん。」

 「じゃあ、これからはまた友達として仲良くしてな。」

 南場は立ち止まり、右手を差し出して来た。僕はその手を握り返した。

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