心眼
勝利だギューちゃん
第1話
「何を描いているの?」
教室の片隅で、いつもノートにイラストを描いている男の子がいた。
誰とも、関わろうともせず、ただ単にノートにペンを走らせている。
「これは何?」
彼の描く絵はとても上手い。
上手いというより神秘的。
なので、正直な話、何を描いているのかはわからない。
おそらく見た人は皆、そう言うだろう。
「ねえ、何を描いているの?」
「・・・何だと思う?・・・」
「えっ?」
久しぶりに彼の声を聞いた気がする。
いつ以来だろう?
「・・・わからないな・・・」
「白井」
「先生の?」
「うん。担任の白井」
その絵を見てみる。
確かに・・・
言われてみれば、すごく似ている。
白井先生は、確かにゴリラそっくりだ。
しかも、マウンテンゴリラ。
男を握って、ビルに上り火を噴ている。
ちなみに白井先生は、オールドミス。
「でも、そんなの描いていいの?」
「いい」
「なんで?」
「仕返し」
「仕返し?」
彼は今日、冤罪で白井先生にひどく怒られていた。
彼が弱いので、抵抗できないのを知っているから、憂さ晴らしにしたのだろう。
「あれ?この絵どこかで・・・」
そういうと、また彼は黙々と描きだした。
彼なりの心の目で見ているのか?
「ねえ、私を描いてみてよ」
「君を?」
「うん。私は美羽・・・鷹野美羽」
それだけ言うと、彼はペンを走らせた。
「出来たよ」
「もう?見せて」
そういうと、彼はその絵を私に見せた。
そこには今まさに、空へと羽ばたこうとしている、一羽の鳥がいた。
私はそれを見て彼の言いたかったことを悟った。
「ありがとう。これ、もらっていい?」
「うん。そのつもりで描いた」
「ありがとう。大事にする」
私は美羽。鷹野美羽。
18歳の女子高生。
私は、役者を目指していたが、挫折しかかっている。
でも、まだ若い。
これからいくらでも、羽ばたける。
そして、いつかあの空へと羽ばたいていく。
いつか、彼との想い出をインタビューで答えたい。
そして、彼のもとへと舞い降りよう。
心眼 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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