番外編⑤
◻︎◇◻︎
———スパアァン!!
激しい音がスパークルした次の瞬間、私の想い人の身体が頼りげなく弧を描き、地面にベシャっと崩れ落ちた。
「———!?」
一瞬何が起こったのか分からなかったあたしだが、振り上げられたパパの手と赤くなっているジル・ラ・アイレスのほっぺたに、徐々に状況を把握する。
「ジル!!」
慌てて近寄ろうとした瞬間、パパが素早い動きであたしの前に躍り出て、口の端を切ってしまったのか、くちびるからタラタラと血を流しているジルに静かな怒りを抱えた声で命じる。
「アイレス伯爵家が三男、ジル・ラ・アイレス。今この瞬間をもって、貴様をアリエル付き近衛騎士から外し、辺境領へと左遷とする」
「っ、」
「パパ!?」
今日のお昼まではいつもと何ら変わらない生活が営まれていた。何なら、ついさっきまで行われていったと言っても過言ではない。
そのはずなのに、今は何が起こっているのだろうか。
愛する人は怪我を負って床へと崩れ落ち、パパが怒りに飲まれ、ママが困ったように微笑んでいる。双子の弟のアキレスはお腹を抑えているところから胃痛だろう。末っ子のシリルに至っては立ったまま放心してしまっている。
「ぱ、」
「アリエル、今回ばかりはお前も同罪だ。1週間外出禁止中にも関わらず外出したのみならず、デート?いい加減にしなさい」
「っ、」
パパにこんなに本気で怒られたのなんて初めてで、あたしは唖然としてしまった。
ジルがパパの命令で運ばれていくのを呆然と見送ったあたしは、いつのまにか自分の部屋にいた。
状況がだんだんと頭の中で整理され、理解が深まっていく。
(パパのバーカ!!)
イライラと鬱憤が募っていく。
(可愛い溺愛している娘に好きな人(あたしの一方通行)がいるからと言って、その好きな人を権力を使って娘から遠ざける親がいるか?普通!!いや、うちのパパがそれだったわ。と言うかあたし、溺愛属性カンストしてるパパのせいで既に婚期逃してるのに、なおのこと結婚を遠ざけるとか酷くない?女の幸せが結婚だけなんて古〜いババくさい思考なんか持ってないけどさ〜。王女としての仕事結構楽しいけどさ………、)
ジッタンバッタンお布団の中で暴れたあたしは決めた。
「………絶対パパの言うことなんて聞いてあげない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます