番外編③
▫︎◇▫︎
王宮の奥深く、私とノエルと数人のメイドと侍従のみが出入りを許されている部屋に、今日も今日とてたくさんの胃がキリキリするやらかしが舞い込んでくる。
「うぅー、」
口元を押さえた瞬間にノエルによって目の前に差し出された桶の中に、大量の胃液を出しながら、私はゆっくりと瞳を閉じる。
「本当に、どこで育て方を間違えたのかしら………、」
「ははっ、まあ、叱られる時間でもいいから俺たちと一緒にいたいだなんて、可愛い子供たちじゃないか」
毎日の胃痛を思い出して一瞬遠い目をした私を、ノエルが優しく抱きしめる。
「アリエルの制御力があれば、問題だけれど問題ではない範囲で収まるだろうから大丈夫だよ」
「………うぅー、またあの子の婚期が………………、」
「大丈夫。一生来ない方がいいから。と言うか、何処の馬の骨でも俺が叩き折って許さないから」
「………………はぁー、ほんと、あの子の未来が心配だわ。………騎士団長すら敵わない実力を持った男を倒さないと結婚できないだなんて………、」
「ふっ、世界最強に近い俺の能力を以ってすれば、あの子の結婚は全て排除できる」
「褒めてないから。………………はぁー、本当に、あなたは息子の父親としてはいい人なのに、なんで娘の父親ではダメな人になってしまうのかしら………、」
「それが父親の性というものだよ」
今日も今日とて悩みの種をたくさん作り出す夫と子供たち。
けれど、今の私は前世でも考えられなかったぐらいにとても幸せ。
「さて、今日は19時からお話し合いのお時間になりそうだからお仕事を早く終わらせなくちゃね」
「あぁ」
この時の私は全くもって予想していなかった。
夜のお話し合いの時間に多くの爆弾発言、アリエルとシリルに想い人がいる件、エイベルが今まで婚約者とうまくいっていなかった件、等々、予想だにしない案件がが投下されること、そして、アリエルの想い人が思いっきり頬を殴られて左遷されること。
本当の本当に、まったく持って予想していなかった。
24時手前、真っ赤に泣き腫らした子供たちを久方ぶりに見つめながら、私は溜め息をつく。
(こんなお馬鹿なことをしなくても、一緒にいられる時間は作れるのに………、)
それでもこのいじらしいやり方を続ける可愛い子供たちに苦笑した私は、子供たちを抱きしめる。
「可愛い可愛い私たちの宝物。………ずっとずっと健やかでいてね………………」
これは、心からの私の願い。
子供たちがぎゅっと抱き返してくれるのを幸せに思いながら、私は私の後ろから私と子供たちを抱きしめるノエルに笑いかけたのだった———。
▫︎◇▫︎
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