番外編①
▫︎◇▫︎
「つーわけで、俺は戦場と愛に生きる」
俺の言葉に、親父と弟のラインハルトが絶句しているのを見ながら、俺はニカッと笑った。
「俺は、国王にはなれない」
次の瞬間頬に走った激痛は、信じられないほど痛かった。
見た目からもケガの調子から言ってもそこまで痛くないはずなのに、ものすごく痛かった。
(ごめんなさい、父さん。俺、やっぱり王なんて柄じゃないんだ。期待に添えなくて………、………ごめんなさい)
何かを悟ったように泣きそうな顔で笑っているラインハルトの方にふらっと近寄った俺は、俺よりもずっとずっと賢い自慢の弟の肩に手を置いて耳元で囁く。
「すまんな、ライン。重荷を背負わせる」
「良いよ。気にしないで、兄さん」
「………お前は良い王さまになれる。この俺が保証する、絶対だ。………『キング』の駒は生まれた時からずっとお前だ」
「っ、」
ラインハルトはこの言葉の真意に気づいただろうか。
多分、気づいているだろう。
ラインハルトにだけ教えたことのある、俺の1番の秘密。
俺が戦場で勝ち続けられる秘密。
(まあ、安心しろよ。お前の愛しい人の駒はクイーンだから)
そんな野暮なことは言わないが、俺の笑みの真意に気づいたらしいラインハルトは顔を顰めた。
くちびるが小さく動かされる。
(えぇー、なになに?『兄さんのアホ』?………おいおい、愛しの兄に対して酷くないか?)
苦笑した俺は、頭の上に
(俺はナイトになるべくして生まれた人間であり、そう生きるのが楽。なら、駒相応に生きるのが正解なんだよ)
わしゃわしゃとラインハルトの頭を混ぜた俺は、口を開く。
「まあ、貴族位は欲しいから、騎士爵位ぐらいは選別してくれや」
「………わかった」
親父の言葉に笑った俺が、愛しのミーシャを横に連れて“マルゴット公爵”として結婚式を挙げたのはわずか半年後のことであった。
なお、結婚式の誓いのキスで俺がミーシャに深いキスをして神官に怒られたことや、結婚式後にあまりのストレスによってミーシャが初夜そっちのけで吐き続けたのは別のお話である。
▫︎◇▫︎
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