第53話 王都奪還作戦。そして、
とりあえず、騒がしい気導鉄騎兵団は外で待機させ、弓をメインにして、兵達は突入をしていく。
小銃や、拳銃用のサプレッサーつまり消音器も装備させたが、以外と音がする。
ここ一番なら、弓だ。
専用の、照準器を付けてある。
そして此方は、防弾防刃の装備だが、鎧のような音はない。
メイン部隊は、通りを進みながら、他の部隊は各家庭を回りながら、救助をしていく。
「基本は、ファイブマンセルで行動。なるべく銃は使うな。弓と近距離はナイフ。きっちりと口は押さえろ。叫ばせるな」
「「「はっ」」」
現代風の作戦部隊。
サバゲーオタクが、残した基本マニュアル。
良い奴だったが、あっさりと流行病で逝ってしまった。
遺言は、『本物は駄目だ。あれはゲームだから良いんだ』と『彼女ができなかった。それだけが悔しい』この二つ。
日本語で、名前と共に墓碑に刻んだ。
彼の思いは、永遠に残った。
ハンドサインを駆使して、静かに作戦は実行されていく。
三日月が浮かぶ空。
明かりは丁度良い。
数千の部隊が蠢いているが、不気味なほど静かな王都。
たまにする音は、住民が脱出するときに立てる音。
広いと言っても、城郭都市。
ドンドンと、進んでいくが馬鹿なことに王城付近までは、狼藉を企む兵が数十人居ただけ。
王城に近付くと、乱痴気騒ぎで馬鹿みたいな叫び声と、連れ攫われた人たちの悲鳴。
はやし立てるような声。
周囲から殲滅して、一気に雪崩れ込む。
中は、ろうそくの薄明かりだが、裸の男女が多数。
「これは判断が付かん。殺すな捕らえろ」
手錠は、作ってある。
理解している者なら、あっという間に解除できそうなおもちゃだが、以外と使える。
武器の所持が怖いので、裸の奴らは裸のままで拘束していく。
一部は、その場を離れ地下にある牢や、さらに上へと進んでいく。
中には、疲れ切り、顔が痣だらけの男が詰め込まれていた部屋や、メイド達が裸で押し込められている部屋を見つける。
前者は、武官達で強引に仕事をさせられたのだろう。
後者は、言わずもがな。
ただ情報はもらい、ドンドンと奥へと進み。
気休めに立っているだけの兵を、制圧をする。
奥の、謁見の間の方でも、酒の匂いや馬鹿騒ぎの声が聞こえる。
今回決起した奴らは、そこまでの馬鹿達ではなかったはずだが、この現状だ。
部屋に飛び込むと同時に、矢で太ももを射貫いていく。
時間にして数分。
作戦全体としては、王都奪還は、たった一晩で終了をしてしまった。
当然伝説になる。
そして、関係者の管理している領。
こっちはもう少しまともな戦闘となったが、旧式の弓や、長槍に投石機。
門を閉じていたが、気導鉄騎兵団により一発。
住民を盾にしたりあがいていたが、あげく、投げやりになり、逃亡もかねて出てくる騎士達。
数週間のうちに、討伐が終わる。
当然現王国での、裁判。
連座制であり、関係者全員縛り首。
それを、説明文を立て広場で晒す。
そして少し落ち着いたところで、王達も呼び戻す。
ところが、だだをこねる。
王城よりもこちらの方が、快適だからな。
結局、王妃様達は残り、王と宰相だけは引っ張ってくる。
逃亡をしないように、兵を付けて。
「さて今回の騒動、王にも非が無いわけではない。そのためパリブス王国は、今後王政をやめ、パリブス国として、あらたに、民主共和制として国を運用していく。王からは国政に関する権限を剥奪。儀礼として各国との会合や挨拶に赴くが、決定権はなしとする」
ここは王都の、広場。
少し前まで、反逆者達が吊るされていたところ。
随分投石などをされて、ボロボロになっていた。
見物人からは、言っていることが分からない様で、王から権利の剥奪のみ理解できたようだ。
「暫定だが、国主として神野裕樹侯爵が立ち、補佐として…… えーすみませんこれ本当に読むのですか?」
「ああそうだ。読め」
「はっ、では。補佐として、国政の補助並びに法案の成立には神野裕樹と愉快な仲間達がその責を負う。以上だ。不満がある者は、本日より二週間以内に陳情を上げろ。当然それに関しての罰則は設けない」
そんな奇天烈な振れが公示された。
むろん王都だけではなく、パリブス国全体でだ。
そして、ついでの布告で、王都は遷都し現カミーノ領へと一旦移す。
王都周辺の水事情も考慮すれば、立地は非常に良いが、なんせ古い。
せっかくこの数年かけて整備した、自領の方が生活をしやすい。
残っている貴族に通知を出して、領を県として改め領主から、県知事へと変更。
任期制で、その期間は五年。
県民からの投票で決めることを通達。
反論ある場合、武を持って抗議しろと通達をした。
強引だが、文句は出なかった。
なお、領主の館は、国により没収。
県の財産として、県庁舎とした。
元々、初期の反乱と、今回の反乱。残りの貴族は少なく従順。
礼金と、新しい家を建てたら納得をしてくれた。
さてと、条文だが憲法の草案中に、変な文言が書かれていた。
『パリブス国は、誰に対しても退かぬ、媚びぬ、省みぬ』と言う文言が発見される。
「これ誰だ?」
聞いても手は上がらない。
「良いじゃ無い。弱い国より良いわよ」
「うーん、そうだな。他国がこれを見たらビビるぜ」
「だが文言的に、独裁国家ぽくないか?」
「意気込みよ」
わいわいと、話は盛り上がる。
もうみんな、二〇歳など越えているから、酒を飲みながら。
「これって、憲法の条文だろ? なら国として、国民に対する宣言だから良いんじゃね?」
「それもそうか?」
会議? は、混迷を深めていく。
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