第6話【セリフ】「ねこのストーカー」(2023/11/30(木)Lit.Link投稿/元メモも2023年11/30(木)作成)
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■配役■
A……大人になっている現在(20代)と子供の頃の2役。主人公視点で、BとCが付いていないモノローグ等(モノローグ内の、カギカッコ「」または二重カギカッコ『』でくくられた他者のセリフ部分も含む)は、Aが読む担当。
男性として書かれているけど、読み手の解釈次第で女性に変更可。
B……「彼」と代名詞で呼ばれている、Aの現在の友人の一人でストーカー被害者。20代。セリフが少ない。一応男性だが読み手の解釈次第で性別変更可。
C……「彼女」と代名詞で呼ばれている、Aの幼馴染み。名前は「根子(ねこ)」。子供の頃と大人になってから(20代)の2役。女性……読み手の解釈次第で性別変更も可だけど非推奨。女性のままが無難。
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B(彼)「じつは……ボク、ねこにストーカーされてるんだよね」
と彼が話してくれた時、自分を含めたその場のみんなは、ほのぼのとしてしまった。だって猫にストーカーされてるなんて!
B(彼)「え?そうじゃなくて……」
彼は一人暮らしの家で子猫を飼い始めたばかりで、その子猫に懐かれて後をつけられているとか、とても可愛いじゃないか!
B(彼)「ち、ちが……ううん、そう、なんだ。子猫モード全開の時は、すごく甘えられて、メロメロに可愛いんだよ~」
そう言う彼に、みんな「うんうん」と頷(うなず)いて猫談義(ねこだんぎ)に花を咲(さ)かせていたものだ。
だけど同時にふと、昔の……子供の頃の記憶が思い浮かんだ。保育園に入園したくらいからの幼馴染(おさななじ)みの記憶だ。
□ ■ □
彼女はみんなから「猫ちゃん、猫ちゃん」と呼ばれて猫っ可愛がりをされていて。見た目もたぶん性格も本当に可愛い子だった。みんなも自分も彼女のことが好きだったんだ。
だけど彼女は成長していくにつれ、見た目は可愛いから綺麗に変わっていったけれど、全体的な印象は地味で暗くて、声をかけづらい存在になっていった。
それでも自分は幼馴染みのよしみで声をかけ続けた。
子供の頃のA「おい、根っ子(ねっこ)!おまえさぁ、そこにいる(いん)と邪魔なんだよな!
……えっ?聞こえないなぁ?っていうか根っ子は根っ子で、人間でなければ猫でもないからしゃべんないもんなぁ?
猫はたまにしゃべってくることもあるけど、猫語(ねこご)で。でも根っ子語(ねっこご)なんて聞かねーしぃ?」
……自分は、大好きだった彼女のことを、好きなんだろう?と友達たちからからかわれた時、素直に認められなくて。ガキだったから……その頃、“ねっこ”が“根っ子”と漢字で書くことを知って。
彼女が「猫ちゃん」と呼ばれていたのは、名前の読み仮名(がな)が「ねこ」だったからだけど。後で漢字で書くと根っ子の“根(ね)”に根っ子の“子(こ)”っていうか、子供の“子(こ)”だな、それで「根子(ねこ)」なことを知ったのと合わせて……。
子供の頃のA「な、な、な、なんでアイツのことを、幼馴染みだからってだけでオレが好きだってことになるんだよ!?
アイツは名前の通りに“根っ子(ねっこ)”だぜ?そう、“猫”じゃなくて“根っ子”!根っ子なんか好きになるヤツなんている(いん)のかよ?」
そんな風に誤魔化(ごまか)してしまったんだ。
もちろん彼女は反論した。それはオレが彼女のことを好きじゃないという主張に対してじゃなく。彼女の名前をからかったことに対してで。
C(子供の頃の根子(ねこ)/彼女)「……ちっ、違(ちが)……わくはないけど。確かに私の名前は根っ子から付けたって親から言われてるけど。それにはちゃんと意味があって!
『根っ子は、太いしっかりした根っ子は、地面の上に出た部分が倒れないようにしっかり支(ささ)えてくれるし、細かい根っ子は栄養(えいよう)や水を土から吸収して運んでくれるし、地面(じめん)の上に出た部分が光合成(こうごうせい)……太陽の光のエネルギーを栄養に変えてくれたものを貯(たくわ)えてくれている大事な存在だ。
おまえにはみんなの中でそんな存在になってほしいし、“ねこ”って響(ひび)きが可愛いから。そんな名前にしたんだよ』
って。教えてくれたわ!」
そう言う彼女にオレはさらに言ってしまったんだ。
子供の頃のA「じゃあ、やっぱりおまえは『根っ子』であってんじゃん?これからは『ねこ』じゃなく『根っ子(ねっこ)』って呼ぶからな!」
……それ以来、オレは意固地(いこじ)になって彼女のことを名前でからかい続けていった結果。彼女が可愛くて男の子たちにモテることをやっかんでた……妬(ねた)んでいた女子たちが乗っかってからかうようになって、それがいじめのようになっていって。
彼女はそれでも学校を休んだりすることはなかったけど、だんだんと無口になって見た目も暗くなって、だけどよく見れば可愛くて、だんだん綺麗(きれい)になっていって、オレはずっと本音では好きだったんだ。
それは高校進学を機(き)に、学校が別々になって。大学進学を機に、地元を離れて、彼女からだいぶ気持ちが離れてしまった後にも、まるで焼き芋(やきいも)のヒゲ……皮と一緒に付いてる、くぼんだところから生(は)えている細い根っ子だ……が喉(のど)を通り越して、じつは胃にもう落ちてるんだけど。ホクホクの焼き芋の身の部分と一緒に食道を引っ掛かるように通って撫(な)でていった時の感覚が、いつまでも残っているように。心の奥に引っ掛かっていた。
だけどこっちでできた友人たちや彼と楽しく付き合うようになってからは、すっかり忘れていたはずなのに……。
□ ■ □
C(根子(ねこ)/彼女)「私、あの後ずっと考えていたの。あなたに『根っ子、根っ子』とバカにされるたびに、何か言い返してやろうと思って。でも結局言えなくて。今になってしまったけど言うね?
『私はあなたの言う通りに根っ子(ねっこ)だから。私がこの世から消える時には、あなたの大切なものを全部、全部、根(ね)こそぎ奪(うば)い去ってやる……!』
そうしたら根っ子(ねっこ)の存在の大切さを……あなたの心の中に私を深く刻(きざ)み込めるかなぁって」
今、目の前にまるで黒い猫のように黒づくめの彼女が立ってそんなことを言った。
本当にただ、幼馴染みと再会して楽しく思い出話をしているような笑顔を浮かべて。
昔のオレだったら、そんな彼女の姿も可愛らしくて綺麗だと思ったんだろうけど。
ついさっき警察から連絡があって、彼が部屋で包丁(ほうちょう)のようなもので刺されて、同様の飼い猫と一緒に倒れていたのを、玄関のドアが開いたままで不審(ふしん)に思った隣(となり)の人が中を覗(のぞ)き込んだら生々しい血の痕(あと)があって、通報して発見されたって知った以上は。
そして目の前の彼女が、血の付いた包丁を持っているのを見てしまったからには、とてもそんな風には思えない。昔のオレはバカだった!なんてバカだったんだ!!
A「まさかおまえが……何も、彼の猫まで……まだ子猫だったのに」
C(根子/彼女)「猫?ああ、確かにちょっと可愛そうに思ったけど。私が働いていた店で売っていた子だし」
A「なんだって?」
C(根子/彼女)「私、バイト先の店で彼が偶然(ぐうぜん)あの子を買って行ったことで、『合法的に』彼の住所を手に入れたのよ?知らなかった?」
A「そんなこと……(知るわけがない。それに店の客の住所を勝手に盗み見てストーカーをするために悪用するのは)犯罪だろ?」
C(根子/彼女)「住所なんてどこで知ろうといいじゃない?あなたは彼の住所は直接彼に聞いて、あるいは終電を逃したとかで案内されて部屋に泊(と)まらせてもらって知った感じかしら?」
A「…………」
C(根子/彼女)「やだ、そんな目で睨(にら)まないでよ?あなたからすべてを奪(うば)い去ろうという私に恐怖する目ではないわよ?でも、悪くはないわ」
A「彼をストーカーしても良いのはオレだけだったのにっ……!!」
C(根子/彼女)「うーん、どちらかというと私がストーカーしてたのはあなたで、彼はもののついでで、あなたが大切にしている存在のようだから、あなたから奪い去るターゲットにした感じよ?そしてその狙いは間違いなかったようね?」
(了)
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※※これはフィクションです※※
解説:色々とどんでん返しが起きている?そんなストーリーです。
ねこのストーカー→飼い猫に甘えられて付きまとわれている状態を指した、猫ストーカー→主人公Aの幼馴染みの根子(ねこ)という名前の人間にストーカーされていた?→主人公Aもストーカーしていた?(主人公はBLに目覚めて受け担当であるネコだった?)
的な。
でも書いている間に、こんな解釈もできそう?と詰め込んでいったけど。
最初に思いついた引っかけは「ねこにストーカーされている」→「猫にストーカーされている」と思いきや「“ねこ”と読める名前の人間」にストーカーされていて、周囲はてっきり可愛らしい猫のストーカーの話と思って、ストーカーされてる人も困っているけど大事(おおごと)にしたくないような、信じてもらえないなら言っても仕方ないような?と本当のことを言わずにいたら……。というシンプルな、ギャグ的な話だったので。
その辺の解釈は読み手の自由です。
適宜(てきぎ)ふりがなをカッコ()内で振ってるけど。全部にはつけていません。
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