第42話 散りばめられた手がかり
農園までの帰り道。僕は
魔物は食物を必要とせず、人類以外を
*
道中の魔物退治を終え、無事に農園へ
「ただいま。ごめん、少し遅くなってしまった」
「おかえり! ううん、アインスのことを優先させて大丈夫だよ」
家に着いた僕はポーチから
「えっ。こんなに?」
「うん。
「わっ、ありがとう!
僕が〝農夫〟世界の
本日であればアルティリアカブ・ウサニンジン・サラム
『――じゃあ、出荷が五種類の場合のサラム菜は?』
『その場合は〝ナ〟だねっ! そっか。あなたの世界でもノイン語を使うんだね。うふっ、なんだか嬉しいかもっ』
どうやらミストリアスでは、〝ノイン語〟という言語が広く使われているようだ。さらに
その理由を
しかし、この〝ノイン語〟なる言語は、
〝神々も使うとされる、クソ由緒ある言語〟
*
「――はいっ、アインス! お昼ご飯、残り物になっちゃったけど」
エレナは台所からトレイを持ち出し、皿とカップをテーブルに並べる。
カップには温かな
「あ、これ大好きなんだ。ありがとう、エレナ。いただきます」
僕はテーブルに着き、大好物に手を伸ばす。甘辛く炒めた野菜の
「
「うんー。残り物サンドとか、テキトーパンとか呼んでるかなぁ」
床に座ったエレナは
「あっ、そうだ!――アインスが気に入ってくれてるなら、これからは〝勇者サンド
〟って名前にしよっか!」
「ゆっ……。勇者サンド!?」
「そっ! アインスが立派な勇者になれますようにって。そんな願いも込めて!」
そう言ったエレナは顔を上げ、僕にニッコリと
*
昼食を終えた僕は午後の畑に水を
魔物は畑を荒らさないとはいえ、作地が広がれば
森へ入った僕は、そこで見知った男に出くわした。
彼は前回〝犯罪者〟の世界で会った、アルティリア戦士団長のアダンだった。
僕が
「おお! 力無き庶民の強い味方、我らアルティリア戦士団を
「いえ、お邪魔してしまってすみません。あの、一つ
僕はアダンに対し、どうしても気になっていた〝ガース〟の所在を訊ねてみる。前回の世界と同様ならば、奴は戦士団に
「そうですか、ガースの
「えっ。それじゃ、今の所在などは」
「おそらくは南のランベルトスに向かったかと。今や
やはりガースはランベルトスに向かったのか。ミチアの無事もわからない以上、彼女がそちらへ行っていないことを願うばかりだ。
僕が
「アイツはカネよりオンナでしょ! 最近はランベルトスの教会も、積極的に
「うっ、カタラよ……。まぁ、あの街には色々と〝裏〟もありますからな……」
この少女の名はカタラというらしい。彼女はそれだけを言い、今度は刃の長い
ランベルトスの〝裏〟といえば、盗賊ギルドに暗殺者ギルドか。二人の言い草から察するに、教会は孤児らを
その後は僕も戦士団と共に、魔物の討伐に精を出した。
*
今日の一連の仕事を終えた僕は、エレナやゼニスさんと共に夕食の席に着いた。
「ごちそうさま、エレナ。――僕も片付けを手伝うよ」
「ううん! アインスは頑張ってくれてるし、少しでも休んでおいて!」
食事を済ませたエレナは鼻歌を歌いながら、空になった食器をトレイに載せる。〝農夫〟の世界ではゼニスさんの食が細くなっていたのだが、こちらでは
「ゼニスさんは昔、旅をしていたんですよね? 勇者の装備をご存知ですか?」
「ほっほっ、自慢ではないがの。はて、勇者の装備とな?」
「光の聖剣バルドリオン、精霊の盾ユグドシルト、虹の鎧レストメイル――という名前らしいのですが」
僕はポーチの中から、一冊の〝薄汚れた薄い本〟を取り出した。
その本の汚れっぷりに少々顔を
「こりゃあ
やはり〝ノイン語〟で書かれた文章は、ゼニスさんにも読むことができるようだ。
しかし、それよりも。この作中の地名が実在していたということは、勇者の装備も存在している可能性がある。
僕は手を伸ばしてページを
「これが勇者の姿か? いやはや奇妙なイラストじゃ。
拡大鏡を前後させながら、ゼニスさんは
そんな彼の言葉を聞いた瞬間、僕は〝
あの人物は確か、本隊を率いていたクィントゥスという
リーランドさんいわく、鉄壁の防御を誇るクィントゥスは、〝ガルマニアの盾〟の異名で知られていたらしい。
そうであるならば――。
あの盾こそが〝精霊の盾ユグドシルト〟だった可能性が高い。
「ううむ。この剣は
そう言ったゼニスさんは拡大鏡を
神殿騎士の剣といえば、光や
――まずは
少しずつではあるが、まるで真っ白な霧が晴れ渡るかのように、向かうべき目標が見えてきた。僕はエレナたちに就寝の挨拶をし、明日からの行動に
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