幕間:黒髪の青年の苦悩
第25話 接続失敗
ミストリアスでの二度目の冒険を終えた。
僕は現実世界へと引き戻され、自室の全自動ベッドで目を覚ます。時刻を確認してみると、まだ労働へ向かうには少し早い。
「今回は死んじゃったからか。でも、悔いのない人生だった」
悔いのない人生か。
僕はベッドから起き上がり、頭から取り外した接続器をサイドテーブルへ置く。
そしてシャワーを浴びるために、ベッドから足を下ろした。
シャワーといっても、自動的に吹き付けられる気体と薬剤で、
それでも自発的に行動することは、気分を軽やかにしてくれるものだ。服を脱いだ僕は縦長の箱型装置に入り、固く眼を
「……はぁ、さっぱりした」
「
僕は紙束に目を通しながら、ベッドの上に腰かける。どうやら〝ミストリアンクエスト〟を送付してきたと
紙面には
「サービス終了のお知らせ。植民世界:デキス・アウルラ……」
デキス・アウルラ。それは
しかし、サービス終了だって?
やはり本当に消え去ったということか?
ミルポルが
さらに記述を目で追うと、またしても
終了予定/植民世界:ミストリアス――。
現在、この世界は終了の準備を進めております。
終了準備が完了次第、該当世界への侵入は不可能となります。
予めご承知のうえ、ご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。
「そんな……。それじゃあ、アレフの言っていた
およそ三十年以内に、ミストリアスは滅ぶ。そのような宣託を受けたと、〝はじまりの遺跡〟で会った聖職者・アレフは言っていた。
〝滅ぶ〟というのが、文字通りに〝消滅〟を意味するのなら……。
僕はどのようにして、あの世界を救えばよいのか。
いや、もしも次に
まだ、充分に時間はある。
何か打つ手は残されているはずだ。
「そうだ。またミストリアにも、確認してみよう。
管理者であるミストリアとて、自身の世界が消滅するのは忍びないだろう。
今夜も
◇ ◇ ◇
「最下級労働者、ID:XY01B-AC00D3-TYPE-W10-NIJP000015-0C520A-H。速やかに労働へ向かってください。世界統一政府は、規律ある行動を求めています」
僕が情報を整理し、思考を
僕は手にしていた紙束を接続器と共にサイドテーブルに置き、ベッドの音声に
今は規律ある行動を。あの世界を救うためにも、僕が
◇ ◇ ◇
その後――。無事に労働義務を終えた僕は自室へと帰還し、早々に
もしも統一政府の立ち入りならば、この接続器ごと没収されてしまうはずだ。
しかし、これに関しては、僕に調査する
あまりにも
僕は後頭部の
◇ ◇ ◇
「ようこそ、ミストリアンクエストの世界へ」
いつもの真っ白な空間に到着し、聞き慣れた
それでは、まずは単刀直入に。
僕は「ミストリアスの終了は、いつなのか」と
「
ミストリアスには、いくつもの
そして、それらの〝現在時刻〟は異なっていることから、三〇三〇年を迎えた順に消滅させられてしまうわけか。こうして考えてみれば、アレフから聞いた
次に僕は、〝僕が降り立つ日時〟に意味があるのかを訊ねる。
「ユーザーの降臨日時は〝オリジナル・ディスク〟によって規定されています」
接続器に最初にセットした、あのディスクのことか。
「――と、いうことは、僕が世界に降り立つたびに、新たな平行世界が生み出されている?」
「いいえ。適合下にある時空上に、ユーザーの
僕が無限に
しかしエレナの例を思い出すに、僕の行動によって確実に未来は変わっている。たとえ〝エレナとシルヴァンの結婚〟が規定された結果だったとしても、
「それじゃ最後に。僕にミストリアスの終了を阻止できる手段はある?――ねぇ、ミストリア。もしも
「……エラーが発生いたしました。管理プロトコルに従い、接続を終了いたします」
僕が質問した直後。ミストリアの無機質な音声と共に、けたたましい警報音が白い空間に鳴り響いた。真っ白だった世界は真っ赤に染まり、意識を保てなくなるほどの、
◇ ◇ ◇
そして次に気がつくと――。僕は全身に
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