第4話 美しい朝
エレナの家に招かれ、夕食をご
僕は用意してもらった寝室で、部屋の中を独り見回していた。
室内にはベッドが二台。エレナの両親のものだろう。そして壁際の
写真には屈強な体格の若い男性と、エレナによく似た若い女性。
そして彼女の腕に抱かれた、エレナらしき赤子の姿が写っていた。
「なるほど。こういうアバターを創ってみるのも良いかもね」
次にプレイする時は、もっと体格のいい
僕は部屋の
「へぇ。僕とは思えない美少年だなぁ……」
鏡に映っていたのは、豊かな金髪をサラリと流した、青い瞳の美少年だった。
なんというか、すごく〝主人公〟っぽい。
僕は調子に乗って笑顔を作ってみたり、ポーズを決めてみたりする。
当然ながら、僕の動きに合わせて鏡の中のアインスも同じ動きをする。
自分の
本当に、本物の僕の
「驚いた。こんなにリアルなのは初めてだ」
現実にも統一政府の用意した
そういったものは動作や感覚の伝わり方にタイムラグがあったり、味覚や
まさか、これほどすごいレトロゲームが眠っていたなんて。
それとも、
「まあいいや。とりあえず寝よう。お腹もいっぱいだし」
僕は心地良い満腹感と疲労感から大きな
外の夜空には満天の星空と、大きな満月が浮かんでいる。
僕らは暗闇の中で暮らしているけれど、こんなに美しい闇は初めてかもしれない。
さて……。照明の消し方は良くわからないので、そのまま目を
そんなことを考えていると。
僕は次第に睡魔に
◇ ◇ ◇
翌朝。
窓から射し込む暖かい光を浴びて、僕は
「……ん? 朝か」
僕はベッドの上で半身を起こし、大きく
なんだかとても気分が良い、
僕らの地下居住室にも こういった目覚まし時計はあるけれど、あんな作り物の
作り物……?
いったい、
僕はベッドから立ち上がり、窓を開けて顔を出す。その
そして僕の眼からは、一筋の涙が
「すごい……もしかしたら、本当に……」
ここはゲームなんかじゃなく、本当の異世界なんじゃないか?
〝製作・
あれがもしも、ただの
僕らの世界だって――きっと何百年か前の人たちは、人間が土の中に住むなんて思わなかっただろう。ありえないことが、現実に起きたって不思議じゃない。
まだ確証はないけれど。
色々と探ってみる必要はありそうだ――。
◇ ◇ ◇
僕は簡単な
「あっ! おはよう、アインスっ! 朝ごはん用意できてるから、よかったら食べてね!」
僕の姿を確認するなり、大きな
なんだろう……。
心なしか昨日よりも、彼女からの距離が近いような気がする。
「おはようエレナ。――ありがとう、それじゃ早速いただくよ」
「うんっ! どうぞ召しあがれ!」
エレナは
用意されていた朝食はパンとスープ、そして
「美味しかった。ごちそうさま」
僕はあっという間に食事を平らげ、静かに両の手を合わせる。
リビングには僕一人だけで、ゼニスさんの姿は見当たらなかった。
外の景色もそうだったが、家具や食器、家の中の様子も、やはり
◇ ◇ ◇
「ただいまっ! あっ、もう食べ終わったの?」
しばらくすると、エレナが家へと戻ってきた。
僕が朝食の礼を告げると、彼女は微笑み、手際よく食器類の片づけをしはじめる。
「なんだか忙しそうだね。何か手伝おうか?」
「ううん、もう終わったから平気! 今日は街に、おじいちゃんの薬を買いに行かなきゃだから」
台所で食器を洗浄しながら、エレナは僕に街の説明をする。
街の名はアルティリア王都というらしく、つまりは〝この王国〟の首都らしい。
街か。出来ることなら、案内してもらいたいな。
エレナは親切でかわいいけれど、ずっと世話になるわけにもいかない。
「そうだ、アインスも一緒に行く? 旅人さん向けのお店や、酒場なんかもあるし」
……おっと、願ってもない提案だ。
僕は即座に、肯定的な返事をする。
「わかった! それじゃ準備してくるねっ」
エレナは農作業着で濡れた手を拭き、小走りで扉の一つに入っていった。
昨日、僕が寝泊りした寝室へ続く扉の他にも、このリビングには合計三つもの扉が設置されている。外から見た時には〝小屋〟という印象だったけれど、内部の面積は意外と広く造られているようだ。
僕は特にすることもないので、待っている間に
◇ ◇ ◇
そうして時間を
着替えを終えたエレナが僕の前に、再び姿を現した。
「お待たせ! よしっ、それじゃ行こっか!」
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