第2話

ごめんね。嫌なもの見せて、と彼女は下半身から飛び散った臓物を折れ曲がり骨が飛び出しつつある腕を器用に使って集めている。

それをして助かるわけでもないのに。それどころか気休めにもなるとは思えない臓物集めを僕に手伝えとまで言う。僕も興奮していた。ので手伝うことにした。

その間も血は流れ続け彼女はどんどん白く青く美しくなっていく。僕は彼女がそうなるのが嬉しかった。トラックのドライバーに感謝すらした。

僕は元々彼女のことが気になっていたし、接点を作りたいとも考えていたから。でも悲しさもあった。知り合いになれたのにこのままでは警察に物として回収されてしまう。それが悲しかった。だから僕は、内臓集めは早々に切り上げ死にかけの彼女を入れた。背中に弱くなっていく鼓動と細くなっていく息、ぐっしょりと濡れていくリュックを背負い赤信号のまま飛び出して人気の少ない、雑木林に向かった。この時間には絶対誰も来ないし、ここは道から外れてるしで誰も来ない。僕は冷たくなっていく彼女を鞄から出すと抱きしめたい衝動に駆られ、直ぐにそうした。キスもして、その先も容易に飛び越えた。少女の冷たい乳房が手の中でとろけそうだった。僕はこの心を疑った。こんなのは恋でもなんでもない、一種の気の迷いだ。なんて僕が迷っている間に名前も知らない僕の彼女は絶命した。やりきれなさと虚無感の嵐に襲われる。僕を見つめる目にはあの縋るような夢を追いかける少女の輝きは無かった。次に死体の全身の筋肉が跳ね回り、解けた。僕はなんだか蘇って喜んでいるように見えたのでまた熱い接吻をし、垂れ下がる小腸を撫でる。まだ暖かい臓物の海に僕は潜り込む。中はまだ筋肉の躍動がありすぐにまた僕はそのようになった。聞こえるはずのない音、呼吸音が聞こえ僕は今度こそ蘇ってくれたか、と嬉しくてたまらなくなる。光のない半開きの目と浅い呼吸と口から吐き出される血液を全部僕の口に入れたくなる。微かに、寒いとつぶやいたきりまた何も言わなくなった。僕は蘇生をしてやろうと心臓マッサージをする。すでに何本か折れているアバラ骨。抑えるごとに呼吸のような音とちぎれた下半身から血が吹き出してくる。なおもマッサージを続けアバラ骨は全て折れ、べこべことゴム人形のようになった。そんな胸のようすが気になって筆箱の中からカッターナイフとハサミを取り出す。カッターを胸の中心に刺し。引き抜くその空いた穴にハサミを差し込み布でも割くような様子で下に向かってチョキチョキとおろしていく。開いた胸には肺に突き刺さる骨骨と、小さな可愛らしい心臓とがあった。心臓を見た時僕の目から涙が溢れて止まらなくなった。僕は確かに彼女を愛していた。純粋ではないが愛は確かにそこに存在していた。そんなことに投げ出された心臓を見て気づくなんて、だから心臓を食べた。その場で彼女と一つになりたかった。他のところも食べようとした。だがそれ以上傷つけることはできず僕はその場で呆然と彼女の心の味を噛み締めていた。


 そのあとすぐ警察が来て僕は警察署に連れて行かれた。僕は救助しようとしていたのだと主張しなんとその主張が認められてしまい無罪となった。ただ嬉しさはなく満たされない渇きだけが僕の心を包んでいた。その時から僕はどこかおかしくなった。捕まえてくれていたらこうならずに済んだのに、全く僕はとんだ幸せ者さ。

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