なんか土食ってたら世界最強になってたんだが???? ~異世界転生した元社畜だけど不遇のゴーレム使いが実は最強だったので超絶ホワイトスローライフを目指します。ついでにブラック組織は全部まとめてぶっ壊す~

ライキリト⚡

第1章 ルビー編

1-1/異世界転生

001:目が覚めたらそこは穴の底でした。


「どこだ、ここ……?」


 タカシが目を覚ますと、そこは薄暗い穴の底だった。


「え? なにこれ? なんで?」


 混乱しながら昨日の記憶をたどる。


 いつも通りのサービスクソ残業。

 自分たちだけは必ず定時で帰るクソ上司と仕事を増やすばかりのクソ同僚たちのクソみたいな尻ぬぐいを終えて帰宅したのは深夜2時。


『なぁこれ、このグラフの数字違くね? ……はぁ? 俺の指示? 知らねーし! なんだよ、俺が悪いって言いたいのかよ!? ちっ、マジで知らねーから。つか俺もう帰るし。お前がなんとかしろよな』


『あのさー、なんかこの前教えてもらった管理システム? なんかパスワード間違えたらロックかかってさ、ちょっと間違えただけで使えなくなるとかマジゴミだよな? え? 説明したって? いや覚えてないし、てか細かいことはまぁ良いじゃん! というワケで解除よろしく。あちなみに明日使うらしいからナルハヤってことで、オツカレ~』


『おーい、ちょっと良いか。本当にちょっとだからさ。この資料明日までに必要だからまとめといてくれないか。あ、もちろん今日中に頼むぞ? じゃあの』


 クソだ。

 思い出しても全てがクソ。


 帰り際にコンビニ弁当を買う気にもならず晩飯代わりに冷蔵庫に残っていたエナドリをキメた。

 だがそこからシャワーをあびる気力も湧かなかった。


 そのまま力尽きるように布団に倒れ込み、意識はブラックアウトした。

 それでもいつもの目覚ましだけはちゃんと朝5時にセットされているのを確認した気がする。


 今日は火曜日。

 週もまだ前半で、明日も労働が待っている。


 それがタカシの最後の記憶である。


「なんだ、夢でも見てんのか……?」


 一瞬だけそう考えたが、すぐに違うだろうと判断した。


 全身で感じる感覚があまりにもリアルだったからだ。


 背中に感じる土の冷たさ。

 そこから香る湿ったような地面の匂い。


 肌に触れるかすかな風の感覚。

 頭上から入り込む眩しい光。


 気温、湿度、色彩、重力。


 自分自身の心臓の鼓動、脈打つ血管。


 全てがあまりにも鮮明だった。


「夢じゃないなら、もしかして俺は死んじゃってたりして……」


 記憶の最後のブラックアウト。

 あれが眠りに落ちたのではなく、命を落とした瞬間なのだとしたら……。


 そう考えたほうが自然に思えた。


「死んだ、か……」


 もしそうだとしてもタカシはあまり驚かなかった。


 働く以外に何もない、楽しくもない生活。


 朝早く起きて会社に行って夜遅くまで働く。

 徹夜なんてよくある事。


 自分が生きているのかどうかさえも怪しかった。

 そこに生きているという実感なんてなかった。


「だったらもっと良い所に来てても良くない??」


 暗くて深い穴の底。

 ここが天国か地獄かと言われたら地獄だと思う。


 だが地獄に落ちるような生き方はしてこなかったつもりだった。


 人に優しくすることを続けた結果がクソブラック企業でのクソサービス残業である。


「ないか。やっぱり現実……ってコトだよなぁ……」


 ここは夢かあの世か、もしくは……なんて考えたが、最終的な結論はそれだった。


 全身の感覚があまりにもリアルで、生きている時と変わらない。

 タカシは死後の世界のことなんて知らないが、思考も身体も生前と変わらないのならそれはもうただの現実だと考えた。


 気が付いたら全く知らない場所にいるなんて、いっそ夢だった方がありがたい。

 だがそうではないらしい。


「んん? タカシ……? 俺、そんな名前だったっけ……?」


 自分の名前がそれしか浮かばない。

 名前なんて一つしかもっていないから当たり前のハズなんだが、なぜか自分自身の名前に奇妙な違和感を感じる。

 けれどその違和感の正体は分からなかった。


「いや、気のせいか。さすがに自分の名前まで分からなくなってはいない……」


 タカシはこんな状況で混乱しているからだろうと自分を納得させる。

 意味不明な状況のせいで妙な事を考えてしまったのだと。


「それで、どういう状況だよ? これ……」


 改めて今の自分の状況を冷静に考えてみたが、やっぱり意味不明な状況である。


 タカシがいたのは深い穴の底だった。

 大人2人が横になれるくらいの幅がある円形で、立ち上がっても穴の外に手は届きそうにない。


 全力でジャンプしたとしてもとても届かないだろう。

 土の壁に切り取られた頭上の空は小さく遠く、古いホラー映画でみた井戸の中から見た景色に似ていた。


 タカシはそんな穴の真ん中で仰向けに倒れていた。


「おーい!!」


 穴の外に声をかけるてみるが、返事はない。


 ――……おーい。

 ――…………おーい。

 ――………………おーい。


 反響した自分の声だけが虚しく響く。


 まるで人の気配がしない空間だった。

 穴の外にも誰かがいる気がしない。


 あまりにも静かな世界だ。


「どうしろってんだよ、これ……」


 タナカは仕事帰りのままくたびれたスーツ姿だった。

 いつもと違うのはポケットにしまっていたハズのスマホやサイフは見当たらないこと。


 そしてスーツが土で汚れていることくらいだろう。


 所持品はゼロ。


 周りにはなにもない。


 食べ物も水も、本当に何もない。


 とにかくここから出ないと死ぬ。


 それだけは確かだった。






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 【作者あとがき】

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