第3話 串の三種盛り

「どーれーにー しーよーおーかーなっ」


 開店直後から入り浸っている幼女魔王は、厳正な審査の結果。


「……たいしょー、やきとりきまんなーい」

「へい」


 決められなかったらしい。

 カウンターにぺちょっとし、メニュー石板を両手に唸っている、ツインドリルゴスロリ幼女魔王。

 悩んでいる間にジョッキのおかわりを注いでおく。


「ねーねー、たいしょー」

「へい」

「ぜんぶ……だめ?」


 上目遣いの、幼女魔王。


「魔王様、胃もたれするでしょう?」

「ぶー けちー」


 明日も会社……もとい魔王城なのに、これだから幼女魔王は。


「どーれーにー、しーよーおー……」


 ダメだと分かっても、焼き鳥を食べたい気持ちは変わらないらしい、幼女魔王。

 俺は少し見かねて。


「……特に食べたいのは、どれです?」

「んえ?」

「三種盛りくらいなら、差し支えないでしょう」

「……たいしょー!!」


 目がきらきらーっとする、幼女魔王。

 そこから嬉しそうに、三種宣言する。


「へい」


 言われたとおり、全部タレ。

 串を通し、タレの壺につけて、炭火の上へ。


「はわぁ……」

「よだれ落とさないでくださいね」

「がんばる」


 一滴落ちたので避けた。


「へい、おまち」

「わぁい!」


 ねぎまと、ぼんじりと、つくね。各種3本ずつ。


「ふふ、たいしょー」

「へい」

「おかわり」

「明日も魔王城でしょう」

「けちー」


 俺はけちではないので、ジョッキをもう一杯だけ注いだ。


「たいしょー」

「へい」


 ジョッキと串に交互にぱくつき、少しタレを口端につける、幼女魔王。

 瞳を至福な感じに細め、にへらとまた微笑んで。


「だいすき!」


 ジョッキを突き出す、幼女魔王。


「だからおかわり!」

「だめです」

「ちぇー」


 ……甘やかしすぎてはいけないな、と思った。

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