4〜誤送信〜
自分の投稿なんて一切していない。紫陽花の投稿を鑑賞するだけだから十分だ。今も、「ストーリー」と呼ばれる24時間限定配信の投稿欄には、放課後に友達とカラオケに行く知り合いたちの熱い青春の時間が共有されている。受け入れるつもりなんてないのに、ただ画面を見ているだけで強制的に押し付けられる幸福の欠片は、璃仁には暴力的な刃となって襲いかかる。
見たくもないものを見てしまい、慌てて「ストーリー」を閉じる。いつものように「SHIO」のアカウントを覗き、新しい投稿がされていないことを確認する。最近、彼女はあまり投稿をしていないのか、最新投稿日は始業式の日で止まっていた。何度もその写真を眺めては、恋する乙女みたいに妄想を膨らませてしまうから始末が悪い。
そろそろオムライスを食べ終わるというころ、璃仁のスマホの通知が鳴った。心臓が分かりやすくドクンと跳ねて、通知に視線を移す。
紫陽花からだ。ご飯を食べてくると言っていたが、もう食べ終わったんだろうか。それにしても、今日の連絡はもう終わったと思っていたのに、食事後にまた連絡をくれるなんて、と璃仁は期待に胸を膨らませてメッセージを見た。
19:50『週末、13時に駅前』
ん、これはどういうことだ?
週末に、駅前……?
これって、待ち合わせをする時に送る内容だよな。それを自分に送ってくるって、もしかしてデート——。
と璃仁の頭の中で都合の良い妄想が膨らんでいったところで、紫陽花が先ほどのメッセージを取り消した。画面上には「送信者がメッセージを削除しました」という文言が浮かんでいる。
19:52『ごめん! 間違えた』
慌てた様子の紫陽花の断りと送られてきた「Sorry」のアニメっ子スタンプに、璃仁はなんだとため息をついた。
19:53『はい、大丈夫です。おっちょこちょいですね』
もう、と小言の一つでも言われるかと思い待ち構えていたが、それ以降紫陽花からのメッセージは来なかった。
夜、寝る前にもう一度紫陽花からのメッセージが来ていないか確認したけれど、やはりトーク画面にはアニメっ子のスタンプの女の子が物寂しく頭を下げているだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます