Light My Fire 〜ハートに火をつけろ〜

Habicht

リスタート編

第1話 リスタート

どれくらい歩いたんだろう……


ハビトは全てを失い、当ても無く彷徨っていた……


どうしてこんなことに……


そんな事はもう、考えても仕方のない事なのに……


ーーーーーー


※「勝手な事しないで!」


*「もうついて行けねぇよ」


⌘「お前は要らない」


ーーーーーー


あぁ、まただ……思い出したく無いのに……


もう路銀も底をついた、腹が減った、水……


長旅で疲弊しきった体は、余計に彼の心を蝕んでいた……


いっそもう……ここまでかな……


力無く膝が砕け落ちる、立ち上がる気力など、とうに失くしていた……


ぼんやりとする意識の中、遠くから小人族の影が見えたような気がした、

錯覚か……


?「ちょっとそこの冒険者さん、街道で死なれちゃ商売の邪魔なんだよね!」


小人族らしい甲高い声、

返事をしようにもハビトはもう言葉すら失い、気絶してしまった……


?「ちょ、ちょっと〜!」

慌てる小人族の女の人、そして…………。



ハビトは目を覚ました。


(生き……てるのか……?)


少しだけ首が動く、目を動かし、周囲を見回してみた……


少し狭い部屋だが、家具や調度品が揃っていて、清潔感のある……


(あの小人族に助けられたのか?)


?「やっと目が覚めたみたいだね!」


あの声だ。


ハビト「ぁ……ぃ……」

喉を枯らした事でまだ声が上手く出せない。


?「無理に喋らなくていいよ、君は街道で行き倒れてたんだぞ、私が通らなければ死んでた所だったよ!」


やはり、この人に助けてもらっていたんだ……


?「滋養強壮に効く薬を持ってきたんだ、これを飲んでもう少し休んでるといいよ」


介錯され、薬をいただき、少しすると体が軽くなるような気分になり、ハビトはまた眠りに落ちた……。


そうした介護から数日、すっかり元気を取り戻したハビト。


?「もう大丈夫だね」

にっこりと微笑む小人族の女性、小人族は若い見た目と低い身長の種族で、年齢はよく分からないが、ここ数日の会話で、十分な大人の女性だろうという事は分かってきていた。


ハビト「えぇもうすっかり良くなりました。ありがとうございます」

ハビトの応えに、またニッコリと微笑み返す女性。


?「私の名前はシノ、この町で小さな工務店を営んでるの、主に小人族のお家だけどね!」


工務店……あぁ、大工さんみたいなものか……


ハビト「僕の名前はハビトです、何かお礼をしなくてはいけないのですが、あいにく持ち合わせもなく……」

申し訳なそうに俯くしかないハビト、


シノ「そんなのいいよいいよ! 持ち物があの使い古された剣だけなのは、もう知ってるからね!」

壁に立てかけられたハビトの剣を指しながら笑うシノ。


ハビト「すみません……すぐに仕事を見つけて、お礼をさせて頂きます!」

死のうとしていたなんて、この人の笑顔の前では絶対に出してはいけない言葉だ。


シノ「だったら傭兵、お手伝いしてくんない?」

人差し指を立てて名案といったドヤ顔のシノ。


ハビト「傭兵……?」

まぁ確かに僕は戦う方しか能のない冒険者だけど……


シノ「そう傭兵! 私は大工だし、旅は危険が付きもの、最近は隣町の依頼も入ってくれるんだけど、街道とはいえ物騒だからね! 君が良ければお給金も弾むよ!」

助けたとはいえ、得体の知れない冒険者をいきなり雇うなんて……

でも、嬉しいな、この人の助けになるなら!


ハビト「喜んで引き受けさせて貰います! よろしくお願いします!」


シノ「いい返事! 服は洗っておいたから、準備を整えてね! 今日から早速お仕事スタートだよ!」

ウインクとガッツポーズを決めるシノ。


ハビトは少し呼吸を整え、

「はい!」

と応えた。

自然と笑顔になり、2人は見合って笑っていた……。



つづく。

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