第14話 いくら立派でも片付けないとダメなんだ

「あ! おとしゃん、こっちだよ」

「……こっち」


 ジンに気付いたリルルとノエルの幼女二人がジンの手を取り、こっちだと引っ張っていく方向にあるのは……雪隠せっちん、御手洗、便所と呼び名は色々とあるが、要はトイレだ。そして考えたくはないが先程のエミリアとの会話から幼女二人が見せたいモノがあるんだとジンの手を一生懸命に引っ張っているのは、その先にブツが存在するからなのだろうと容易に想像出来た。


 確かに立派なうんこが出るまでは胃に優しく消化にいいパン粥を食べ続ける様には言ったが、決してとは言ってないんだがと思わず顔を顰めてしまうジンだった。


「ほら、みて!」

「……みて」

「おぅ……確かに立派だな。じゃ……ん?」


 想像通り……いや、想像以上に立派なブツを見せられたジンは確かに見たぞと踵を返せば、そこにはトイレの掃除道具をジンに向かって差し出すエミリアが立っていた。


「エミリア、これは?」

「分かりませんか? 掃除道具ですよ」

「いや、それは分かるが……なぜ俺に?」

「分かりませんか?」

「ああ、全くな」

「では、早くそれを流してもらえますか?」

「ん? なんでそれを俺に言うんだ。流せばいいだけだろ?」

「いいですから、早くして下さい! もう皆、限界が近いんですから!」

「お、おぉ……あ!」


 ジンは納得出来なかったが、エミリアの気迫に圧されトイレの水洗レバーを手前に引くとタンク内の水が一斉に流れ出すが、相変わらずブツはそのまま鎮座していた。


「分かりましたか? その子達も残そう、見せようと思った訳ではなかったようですが、あまりにも立派すぎて物理的に流せませんでした。ならば、ジンさんに見て貰い責任を取って片付けて貰おうとなった次第です。分かって頂けたのなら、よろしくお願いします」

「お、おぉ……」

「おとしゃん?」

「……わるいこ?」


 エミリアの気迫に幼女二人は自分達がしたことでジンが怒られていると勘違いしてしまったのか、さっきのテンションとは打って変わってシュンとなる。


 ジンはそんな幼女二人の頭をポンポンと撫でると「気にするな。立派だったぞ」と声を掛け、自分は掃除するからとリビングでクロと遊べと言えば「うん!」と走って行く。


「さてと、やりますか……しかし、あんな小さい体からこんなのが出るんだ……不思議なもんだな」


 便器の中に収まっている立派すぎるブツを片付けるのに少しだけ残念な気持ちになるが、片付けないことには他の子達が用を足せないのも困ると意を決して「ハァ~面倒くせぇ」と片付けるのだった。


「終わったぞ」

「お疲れ様です」

「私が先だからね!」

「えぇ~そりゃないよ」

「男の子は外で出来るでしょ!」

「「「……」」」


 ジンがトイレ掃除が終わったと報告すれば、エミリアが労いティアが直ぐに立ち上がり小走りにトイレに向かうと、ギル達男の子が不満を漏らすが、レナが男の子は外で出来るでしょと言われ黙ってしまう。


 確かに外でやれないことはないだろうが、ソレをすれば許さない存在がいるのだから結果、男の子も順番が回ってくるまで待つしかない。


 ジンは昼を用意しているエミリアが作り終わるのをテーブルに座って待とうと椅子に座れば、体面にオフィーリアとアルが並んで座っていた。


「お前達は見せなくてもいいからな」

「ば、バカじゃないの! なんで僕のをあんたに見せる必要があるのよ!」

「フィー止めなよ。ジンさんもからかうのは止めて下さい」

「悪ぃ。そんなつもりじゃなかったんだけどな」

「それよりも聞いていいですか?」

「ん、なんだ?」

「僕達のことを分かっていたってのは本当ですか?」

「ああ、そうだ。

『ガタッ』

「アル?」


 アルがオフィーリアを宥めながらジンに質問してくる。ジンはアルの質問に対し分かり易くアルの本名であると言えば、アルは焦った様子で椅子から立ち上がる。


「座れ」

「……何故、その名を」

「いいから、座れ」

「アル?」

「……分かりました。ふぅ~」


 少し興奮した様子だったアルをなんとか椅子に座らせたジンは「エミリアから聞いてないのか」と問い掛ければ、アルは「あ!」と思い出したようだ。


「そうだ。俺は人を鑑定みることが出来る。まあ、鑑定たのはここに連れて来てからだけどな」

「では、僕達のことは……」

「ああ、悪いがある程度はな」

「そうですか……」

「まあ、心配するな。だからってお前達をどうこうしようとは考えていない。少なくとも俺はな」

「俺はな?」

「ああ、お前達を探している連中がいる」

「「!」」

「だから、慌てるな!」

「「はい……」」


 ジンはそう言うが、二人はどこか思い詰めている様子で、ジンからは見えないがテーブルの下で二人は両拳をギュッと握りしめている。


「いいか。俺からは何も聞かない。だけど、お前達も何も言うな」

「でも……」

「お前達が思っているより、ここは安全だぞ。でなければ、子供達がこんなに元気な訳がないだろ。だから、お前達が話すなら、自分達の力でここを出てもやっていけると自信と力を付けてからだ」

「……待てません!」

「ん? そりゃ、どういうことだ?」

「僕達にも待てない理由があるんです!」

「んだよ、面倒くせぇなぁ」

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