Reライフボーイとシザーガール~暴食の憑きし業~

かわくや

とある追憶

 あぁ、自分の人生に一体何の価値が有ったのだろう。


 パチパチと。ガラガラと。

 そう音を立てながらゆっくりと崩れ行く天井を眺めつつ、朦朧とした頭で独りそう思った。

 蒸発した父の面影を俺に重ねる母親とそんな親に愛想をつかして毎日遊び歩く妹。

 そんな社会不適合者どもの面倒を見てきたってことであれば確かに社会の意味にはなれたのかもしれないが、生憎俺は社会貢献に意味を見出だせる程殊勝な人間じゃない。

 やっぱり……

「誰も認めてくれなかったのが辛かったのかなぁ」

 焼けゆく天井に手を伸ばし、掠れた喉でそう呟いた。

 まぁ、何の誇張もなくアイツらの世話にかかりきりだったからなぁ。

 周りからすれば好き好んで独りで居る変な奴って評価が良いところだろうし……そりゃあ認められもしないわな。

 これに至っては周囲と積極的に関わりを持たなかった俺が悪い様な気もするが、ここは環境のせいにしておこう。

 誰も知らない、俺による俺の人生への意趣返しだ。

 ……なーんて、最後の一言みたいなことを言ってみたは良いものの。

「……これで終わるのか」

 不思議とそんな言葉が浮かんできた。

 どうやら、俺はこんな人生でもまだ生きていたいらしい。

 うーん、だけど今更なんだよなぁ。

 まだ微かに動く瞳孔で辺りを見回すと、ドアのノブは溶け、梁までもが殆ど焼け落ち、いつ崩れるかも分からないような天井が剥き出しになっていた。

 流石にどんな正義感を持った人間でもこんな場所に来る事は無いってことくらい俺にも分かる。

 せめて俺が今から出来ることと言えば……そうだな。

 顔も名前も知らない父を呪うこと位だろう。

 うーん。後は来世に期待って感じで。

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