灰も残ると思うなよ
一味違う一味
第一章
第1話
俺は何をしてるんだろう……
やりたくもない仕事で扱き使われ
行きたくもない飲み会で貯金を削り
会いたくもない連中に笑顔を振り撒く
学生時代は「良い人だね」と言われ続けたのが自慢だった
複数受けた面接は、どこも好評で人間性が素晴らしいと絶賛された
その中で最も強く勧誘してくれた会社に絆され、入社してしまったのが運の尽き
今現在に至るまで、底辺作業員として酷使され続けた
口癖が「帰りたい」になってから何年経っただろうか
仕事中は勿論、どんな場所でも漏れ出る口癖は俺のストレス増加にひっそりと貢献していた
寝起き一番に出た時は「もう駄目だ」と思ったね
「帰りたい」
こんな風にさ
ストレスと反比例するように削られたコミュ力では、事務的な会話以外を行うことは難しい
数少ない休日は「帰りたい」以外を話さないなどザラである
まぁ、そんな日々も今日で終わりだ
忌まわしい職場の危険物倉庫で薬品を撒き散らしながら、そう思う
現在は昼食時、食堂からほど近いこの場所で爆発が起これば呑気に飯を食ってる上司は殺せるだろう
運が良ければ過ごし少し遠い同僚も殺せるはず
なにせこの会社は、視察をすり抜け法定以上の危険物を隠し持ってるのだから
フッと、久しぶりに作りらない笑顔が浮かぶのを感じた
まだ俺は笑えたのか
こんな時だというのに胸に幸福感が灯る
だが、悪くない
さあ、そろそろ
この気持ちのまま死んでいこう
ああ
願わくば
「全員、死んでくれ」
そうして、愛用ライターで火をつけた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます