第23話 人形となった夜
「行け!そいつを殺しなさい!」
上條の命令に従い洗脳された人達が一斉にツツジに襲いかかってきた。
ツツジは車から後部座席に置いておいた警棒を掴み片っ端から応戦して行く。
(あのクソ野郎が人を操れるのには何か仕掛けがあるはず!何か条件があるんだ!)
戦いながらも考える。
だが、何も思い浮かばない。ツツジにはそこまでの洞察力はなかった。
ただがむしゃらに警棒を振って薙ぎ倒して行く。
数分間戦ってようやく全員を倒し彼女は息を切らしながら上條を睨みつけた。
「攻撃に迷いがないですね」
上條は顎に手を当てて考えはじめた。
「ところで先ほどから見ていると、貴方は殴りはするが致命傷を与えるようなことはしていない」
「は?だからなに?」
「心の奥底では若干の罪悪感を感じているのでは?」
その言葉の意味がツツジにはわからない。なぜ急に罪悪感の話をしたのだろうか。
しかし、その答えはすぐに分かることになる。
「銃を取り出しなさい」
上條がそういうとあり得ないことが起こった。
なんと、ツツジが言われた通り腰に差していた銃を取り出したのだ。
ツツジは目を丸くした。
どうなっているんだ。操られているにしては意識がちゃんとある。
「なるほど、これは面白い。完全に同情をしているわけではないため意識までは乗っ取られずに済んでいるようだ」
上條がクスリと笑う。
「自分に銃を向けなさい」
やめてくれ、そう思うツツジの気持ちとは反して銃口はゆっくりとこちらに向いていく。
顎の下にひんやりとした温度を感じた。
「あー、そういうことか、、、」
ツツジはため息をついた。
(なるほどね、今更気づいたよ。こいつの力が使えるスイッチは心の乱れ。罪悪感や怒りを与えることで心を不安定にさせて操ることができる)
これは抵抗しても逃れることはできなさそうだ。
「まあ、もう遅いみたいだけど」
これから死ぬのであろうという覚悟はそれとなく決まってはいた。
ツツジは目を瞑った。
引き金を引け、という上條の指示を待つ。
だが不思議なことに上條はまだ何も言ってこない。ツツジは疑問に思いゆっくりと目を開けた。
「このまま貴方を自殺させるのも私にとっては容易いこと、、、」
上條はどこか一点を見ながらそう言う。
どこを見ているのであろうか。ツツジは動かない体の目だけを動かして、彼の目線の先を見てみた。
そこには小さな子供が立っていた。
「予想外なことになると返って都合がいいこともあるんですよねぇ。ところであなた、子供にはまだ危害を加えていませんねー。よほど子供が好きなのかそれとも何かトラウマでもあるのか」
まさか。
ツツジは嫌な予感がした。
「確かに特バツは何してもいいかもしれない。だがもしですよ?あなたが無害な子供を殺したとしたら、、、」
銃はツツジではなく、今度は子供へと向けられた。
ツツジは必死に抵抗しようとする。
だが、体が動かない。
「おい!ふざけんな!やめろ!!」
そうは言ってもやめるはずがない。
「これでお前は完全な罪悪感に取り憑かれる!撃ち殺、、、」
指示を出そうとした時。
上條はあることに気づいた。
「ん?」
サツキが入った店から革ジャンを着た人物が出てきたのだ。
(あれは、、、。サツキ!!)
暗いし遠くてよく見えないがあれは間違いない。
撃てるだろうか、そう思ったがツツジは撃つのが上手いという情報を聞いた。
なら撃てるだろ。
「待て!やはり変更だ!!」
「え!?」
「見えるか?あれはサツキだろ?お前には今からあいつを殺してもらう」
ぐるん、と銃口は勢いよくターゲットに向けられる。
「相棒を撃ち殺しその罪の重さに泣き苦しむんだな!そうすればお前は完全に私のものだぁぁ!!」
これで勝利だ。
「撃て!!」
引き金が引かれ、あたりが一瞬発砲により明るくなる。
ターゲットは勢いよく倒れた。
ヘッドショット。即死である。
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