第16話 恐怖!!刃物お化けのウェポンメイカー!!
深夜2時ごろ、洋子は友人と画面通話で話し込んでいた。
「あはは、ってかそれってヤバくない?」
「でしょー?でもアレってさそもそもざまあってゆーか?じごーじとくってやつ?」
洋子の家は両親が共働きなため家にいないことが多かった。そのため彼女は深夜遅くまで友人と話し込んでいても邪魔されることはない。
どんな中身のない会話でも、親に知られたとしたらまずい話も通話相手以外は聞いていないのだから話しても全く問題がないなどの理由からメリットがとても多いため彼女にとって親がいない時間は寂しくもなんともなかった。
「あんまりやりすぎると死んじゃうかもよ?」
「そんときはそん時で、、、」
ふと、洋子は異変に気づき座っていた椅子から立ち上がる。
窓の外だ。窓の外に何かいた。
「どした?」
「いや、今なんか外に、、、」
「外に?なに?」
「いや分かんないけどなんかいた気が」
「何それ。キモっ、気のせいじゃない?」
「そう、、、なのかな」
いや、違う。確実に何かいた。
目はめちゃくちゃいいって言うほどではないが、外で何かが動いていたりそれが生き物なのかどうかの判別ができるくらいは目はいい。
その確実にいたものは明らかに動く物体、もしくはいきものであった。大きさ的に人間だったとも言える。
洋子は不審に思いつつ窓の外を見てみたが、そこには誰もいなかった。
「もしかして、のぞき、、、?」
「えー!?誰か呼んだほうがいいんじゃない!?」
「いやもう少しでケイくんが来るから」
「あ、そうなの?」
ケイくんというのは洋子の彼氏である。いつもおちゃらけてるし喧嘩は強くないし成績も悪いが、顔がとてもいいので付き合っていた。
「遅くなったら嫌だなぁ」
ケイがいつくるかを心配していたちょうどその時にピンポーン、と玄関のチャイム音が鳴り響いた。
「あ、絶対ケイくんだ」
とりあえず玄関まで彼を迎えに行かなければ。
「んじゃあねー」
そう言って洋子は通話を切ると、急いで2階の彼女の部屋から出ると階段を降りて玄関に向かった。
ピンポーン。
階段を下る最中またしてもチャイム音が鳴った。
「開いてるよー」
だが、早く入ればいいのに玄関の扉は開かない。家は相変わらず静かなまま。
「ケイくんさ。聞いてよ!なんか家の周りに誰かいるみたいでさ。気のせいだと思うんだけど、、、」
洋子が話しかけても誰もいないかのように返事なし。扉越しでの問いかけにも答えない。
さっきのこともあって怖くなってきた。
「ケイくん、、、?」
扉まで近づくと洋子は恐る恐るゆっくりと玄関を開けた。
そしてその向こうに居たのは。
「なんだ、やっぱりケイくんか」
そこに居たのは間違いなく彼女の恋人であるケイだった。
返事をしないとは一体何を驚かす気だったのだろうか。
彼女は安心したのか、ため息をついた。
「黙ってないで返事してよ〜」
するとその時。
ドサっと何かがケイの頭から落ちた。
いや頭にあったものがというか、頭部そのものが落ちたのだ。
ケイは完全に首を落とされていた。
「ぎゃあああああ!!」
洋子はあまりの光景に腰を抜かした。
ケイの体は足から崩れ落ちていく。
まだ切られたばかりの首の断面からはドバドバとペットボトルをこぼしたかのように血が吹き出していた。
だが恐怖はこれだけでは終わらない。
「え、、、?」
彼のすぐ後ろにはマスクをつけ黒いフードを被った人物が立っていたのだ。
しかも、驚くべきことにその人物の手には刃物が生えている。持っているのではない、自身の肉を破るように刃物が突き出しているのだ。
洋子は震えながらも立ち上がり階段を駆け上がって自室の部屋の鍵を閉じた。
そして急いでスマートフォンから大慌てで警察を呼んだ。
「あ!ああっ!!警察ですか!?助けてください!ケイくんが、彼氏が殺されて!!いえ!!殺したやつはまったく知らないひとです!!」
扉が壊す勢いで強く叩かれる。
「こっちこないで!!あけんじゃねえよ!!!」
そして最悪なことに扉はついに蹴破られてしまった。
「ひいいいっ!!!」
恐怖でスマートフォンを落とす拍子に電話を切ってしまった。
「あっ!!」
謎の人物が洋子に向かってゆっくりと近づいてくる。
「あ、あんた!!なんなの!?なんなのよぉ〜〜!!」
「なにって?誰かわかんないの?」
仮面を外した人物の顔を見て洋子はすぐに誰か分かった。
「ゴキブリマン!?」
いつも仲間と一緒にからかって遊んでいるやつだ。だが今日は明らかにおかしい。いつもは弱々しいのに、今日は生き生きとしている。人を殺すほどの勢いだ。
「俺にはちゃんと名前がある!!」
「ご、ごめん!桑戸、、、くん!ね?やめて!殺さないで!!」
だが、洋子の命乞いは桑戸には響かない。ギラリとした刃物をさらに鋭利なものにさせるだけだ。
「なんでもする!なんでもするから!」
「俺が殺したクラスメイトの人間はみんなそう言ったよ。でもね?もう遅いんだよ何もかも」
「悪口言ったりしてごめんなさい!!」
「悪口?そんなもんじゃないよね。全く分かってないじゃないか!!」
どんなに謝っても火に油を注ぐものでしかない。桑戸の怒りを止めることはできないのだ。
「い、いやだ、、、!!来ないでぇ!!」
「俺はもう変わった。今の俺は、、、。ウェポンメイカーだ」
洋子の体は桑戸の一振りで真っ二つに割れた。
中身はボトボトとこぼれ、真っ赤な液体がカーペットを染めた。
「警察なんて呼びやがって、、、。まあいい、これはゲームなんだ。警察だろうがなんだろうが殺してやる、、、」
桑戸は血が滴る刃物をゆっくりとしまった。
「ウェポンメイカー?何その名前」
明るく優しい声が背後から聞こえ、振り返るとそこには白衣を着た少年が壁に寄っかかるように立っていた。
「え!?あ、、、」
「どう?楽しんでる?」
「あ、はい。すごく楽しいです」
「いいねぇ〜」
少年は嬉しそうに頷く。
「もっと強くなりたい?もっと強くなればもっと殺せるよ」
「で、できるんですか、、、?」
「もちろん」
「お願いします!」
その答えに少年は満足そうに微笑んだ。
「じゃあさそのついでにちょっと頼み事があるんだけど、始末してほしいやつがいるんだ」
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