樫木百合妄想短歌

樫木佐帆 ks

第一集



白い夏 初めての海 レジ袋 バンザイしている 鮭のおにぎり


触れてみる 声と音との ひと夏は この指使えと削りおとした


小論文 犬がろうかで私には そんな言葉でひとつふたつと


なじめない百メートルをがんばれと 薄めのカバーさみしくかかる


よそゆきの付箋紙一枚入れ直す メモリー全部一行だけの


二人きり 恐さ感じる 「退屈」と 割れないように やさしい笑顔


義務教育 必死で伝え思ったら 偽りだらけの鏡のような


「ありがとう」頭下げてた帰りみち 本心見えぬカメラ片手に


見たくって僕の言葉を言うけどね 見つめて思ういのちを飛ばす


私見て「汚れは勲章」いつもなら ほほえんだ君 無邪気な問いに


空を飛び あの子の顔が だらしない ため息深く透けた光は


何これ?と精神薬を分け合って ふふふと見つめてクスリと笑う


にわか雨 初夏のある朝「本読んで」 けれどわたしは見たいテレビが


友達が倉庫の奥で部活後に 中学生とやさしさこもる


告白し見えてくるもの林檎飴 夕暮れ残して消せない思い出


思い出す 傷つけること茶化されて 心を奪う母の姿が


幼子の例えていうならうれしくて 答えを探しに病室の外


「好きやで?」と言い張ったりして軽くなる いっぱいあった 身近で感じた


あと少し 鍼持つ指が長袖の 思いを込めて ほうちょうの音


一人きりカプチーノを飲む隣りの子 理由はないが憧れながら


くるくると遠い時代の君だけを あじさいの横は日没を待つ


いつだってなんだか似てる昼ねする それが友達同じ日なんて


思い出を終わりの言葉過ぎる時 考えた夏歩む僕らに


見てるけど手元くるわす窓のそば 一目でいいから私を纏って


窓を見て真っ赤に染まるテスト前 怖かったのは終わりを告げる


きこえるよわかり合うときつらいのは さよならの声消えたあとには


髪の毛に授業中より隠れてる そんなのないと似合ってたかな


想い込め今日も触れず電話した身近で感じたバースデーメール




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