第5話 デート

日曜日 デート当日


 私は一応この日の為に、美容院に行き、ネイルにも行った。完璧モードで足が軽い。


 川崎さんの提案でみなとみらいで遊ぶことになった。みなとみらいには以前から行きたいと思っていたのでびっくりした。あれにも乗れたらいいなぁなんて駅から見えるでかい観覧車を見て思った。


「ごめん、お待たせ」

 そうこうしていると待ち合わせから5分遅れで川崎さんがきた。


「待ちました」

「本当に!?ごめん、ごめん」

 川崎さんは必死に謝っていて、私はつい笑ってしまった。


「ふふっ」

「えー、なんで笑ってるの」

「なんでもないです。お詫びにカフェでも奢ってもらっちゃおかな」

「全然おごる。ごめんね」

 冗談で言ったけど、そのままカフェに行き、抹茶ラテを買ってもらった。川崎さんはほうじ茶ラテを頼み、テイクアウトをした。


「やっぱ苦い、川崎さん交換してもらっていいですか?」

 なんとなく抹茶ラテに挑戦してみたがやっぱり抹茶は苦かった。


「え、え、いいの?いや違う、いいよ」

 私の発言に川崎さんは動揺した。言い間違えに一瞬気持ち悪いなって思ったけど、やっぱりなんか可愛さがあった。先輩だったらどう反応するのだろうか。


 そのまま、暖かいコップを持ちながら赤レンガ倉庫を歩いた。そこにはすごく穏やかな空気が流れていた。子供連れの夫婦やカップル、幸せそうな人たちがポツポツとした。そんな落ち着くような場所だが私の心は落ち着いていなかった。


 川崎さんに人見知りをしているのか胸がドキドキしているのか私には分からなかった。


 お互い人見知り同士な私たちはお互い無言のまま海の景色を眺めていた。



「あっ、あそこのソフトクリーム食べようよ」

 私は、びっくりした。この季節で外でソフトクリームはないでしょ。

 川崎さんに手を引かれお店の前に来た。


「寒い中で食べるアイス逆にありじゃない?」

 川崎さんは人懐っこい笑顔を浮かべながら言った。―ー犬みたいだなって思った。


「寒いので食べたくないです」


 結局二人で「寒い、寒い」言いながら食べた。


 散歩していると夜ご飯の時間になり、私と川崎さんは手を繋いだままお店に向かった。

 川崎さんが案内してくれたのは、チェーン店のお店だった。――初デートはおしゃれなところがよかった。川崎さんは女心を分かってない。


 夜ご飯はお互い趣味の話をしてた。先輩と川崎さんとご飯食べた時に見つけた共通の趣味の話だ。ご飯中、話は盛り上がった。


「もう一箇所生きたい場所あるんだけど、行かない?」

 お腹いっぱいにしてお店を出たところで川崎さんが提案した。


「いいですよ」


 そのまま、また手を繋ぎ二人で歩いた。


 着いたのは観覧車だった。


「え、すごい私が乗りたかったのだ!」

「ならちょうど良かった」

 川崎さんはそのまま手を引いて観覧車の中にエスコートしてくれた。


「私、あんまり横浜らへん来ないので新鮮です」

「そうなの?いつもどこで遊んでるの?」

「表参道とか新宿とかそっちの方です」


 二人で外の景色を見ながら話していた。

 みなとみらいの建物が綺麗に立ち並び、明かりが綺麗だ。もう反対側は海が拓けていて自然と人工物のコントラストが綺麗だった。


 夢中で外を見ているといつの間にか頂上に到達しようとしていた。

「ねぇ、川崎さん頂上だー―」

 声をかけようと川崎さんに顔を向けると、川崎さんが真剣な目でこっちを見ていた。


 この雰囲気...川崎さんが今から言うことが、予想できた。


「俺、君のことが好き。だから俺と付き合って欲しい」


 あぁ、あかねちゃんは前から知ってたんだ。


 デートの前日、美容院に行ったあとあかねちゃんとカフェで話していた。


「ねぇ、あの二人付き合うならどっちなの」

 あかねちゃんからの不意に質問に思わず飲み物を吹いた。


「二人ともそんなんじゃないですよ」

 私は咳き込みながら答えた。


「あっちの二人はそうじゃないかもよ。もし、告白されたらどうするの?」

「想像できないです。恋人になったら別れがきちゃうじゃないですか。友達だとずっと一緒に居れますよね。先輩とは友達がいいです」

 私は心に思っていること、そのままを口にした。


「そう考えるタイプなんだね。あんまり彼氏と長続きしたことないでしょ」

「そうなんですよ」

図星だった。付き合ってもなんかこの人違うなって思ってしまう。


「しかも、別れたら連絡先絶つタイプだ」

「当たりです」

SNSで既読ついちゃうと私のこと見んなってブロックする。


「ドキドキするのも恋愛だけど、この人落ち着くなって言うのも恋愛だよ」

「そうなんですかね」

 返事をしつつもやっぱりピンと来なかった。恋愛はドキドキでしょ。


 川崎さんにはドキドキする。だから私の返事は決まっていた。

 ――あかねちゃんはこうなること知ってての質問だったのかな。私はやっぱり先輩とは友達でいたいし、川崎さんにはドキドキしたか


「こちらこそよろしくお願いします」


ーーあかねちゃんは私が告白されることを知ってたのだろうか。私はやっぱり先輩とは友達で居たいしドキドキしない、川崎さんにはドキドキした。ただそれだけだった。


 夜景と海が見える観覧車の中で私と川崎さんは付き合った。


 観覧車から降りた後、私たちはそのまま駅に行き解散した。次のデートは電話で決めようと約束した。


 私は、浮かれながら帰った。この嬉しい気持ちを誰かに伝えたかった。


「もしもし、どうしたの?」

 いつもと一緒、落ち着く声だった。


「聞いてください、今日デート行って来たんですよ」

 私は、先輩に今日の出来事を言った。人見知りであんまりうまく喋れなかったとか、寒い中、アイス食べることになって寒かったとか、夜はチェーン店だったとか。けど、最後乗った観覧車がすごく綺麗だったこととか。


 優しく相槌を打ってくれる先輩についつ喋り過ぎてしまう。

 けど、私と川崎さんが付き合ったことは言ってない。


 私たちが付き合ったことを先輩に言えば、先輩は川崎さんに気を遣って電話をしなくなるだろう。私たちがカフェで何気ない話をすることもなくなるだろう。異性関係には厳しい。私は友達として接したいだけなのに...。


 先輩はそう言う人だ。だから私は先輩には言わない。


「じゃあさ、僕ともデートしてよ」

 ――あぁ、そっか、先輩と電話中だった。


「いいですね。どこ行きますか?」

 先輩とお出かけできることに思わず口角が上がる。

 出かけるのは三日後に決まった。出かける先は元町、先輩が行きたいところらしい。

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