第200話アガサ サラーバでの戦い③
片側の翼を傷つけられたバルバットは、地上戦を余儀なくされた。
アンデットオオトカゲの突進に、シェイクとメルクの連携攻撃。
その隙を突き、マリウルとガリウスが攻撃を仕掛ける。
この攻撃で、バルバットの攻撃を防ぐことは出来ているが、
これといった致命傷を、負わす事が出来ていない。
「こいつ、思ったよりも素早いな・・・・・」
「ああ、油断するなよ」
「勿論だ」
再び、攻撃を仕掛けるマリウルとガリウス。
マリウルが前方に出て、剣を振るう。
バルバットが、その攻撃を躱したところを狙い、
ガリウスが、槍で突く。
見事な連携攻撃だが、その攻撃も空を切る。
何度、攻撃しても、どれも紙一重で躱された。
無理に攻撃を仕掛けず、攻撃を躱し続けるバルバットには
考えがあった。
「ククク・・・・・そろそろ、疲労の色が見えてきましたね」
悪魔は、人を甚振り、絶望を与え、魂が黒く染まってから喰らう。
今は、その過程を楽しんでいるだけ。
だが、バルバットは、人族を、甘く見すぎていた。
戦っているのは、近接戦を挑む、マリウル達だけではない。
背後に控えていたエブリンとシャーロットは、
タイミングを見計らっていたのだ。
そして、その時が来る。
「サウド、お願い」
「うん、任せて!」
バルバットの動きが止まった瞬間を狙い、
サウドが魔法が発動させる。
『サンドハーデン!』
サウドの言葉に従い、バルバットの足元の砂が、
コンクリートのように固くなった。
完全に動きを封じたのだ。
突然の出来事に、対処の遅れたバルバットは、
動くことが出来ない。
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
サウドを睨みつけるバルバット。
そんなバルバットを中心に、雨が降り注ぐ。
だが、ただの雨ではない。
シャ-ロットの魔法『ホーリーレイン』だ。
グールを壊滅させた魔法が、バルバットに容赦なく降り注ぐ。
「グワァァァァァ!!!」
顔を両手で塞ぎ、阿鼻叫喚の呻き声を上げるバルバットに、
今度は、エブリンが仕掛ける。
「ベンヌの血を継ぐ者よ、今、ここに顕現し
我が敵を、業火の炎で焼き尽くせ!
『フェニックス』」
現れたフェニックスは、バルバットを、完全に呑み込んだ。
「ギャァァァァァ!!!」
フェニックスの炎は、敵が焼き尽くされるまで消えることはない。
時間が経つにつれ、
バルバットの体は、灰へと変わり、最後は、塵となって消えた。
だが、悪魔1体を倒したところで、戦いは終わらない。
休む暇など、与えるつもりが無いのか、
今度は、背後からサンドワームが現れた。
新たな戦いが始まった。
一方、アガサのもとへと、進むアルバ達だが
こちらは、アガサの配下を多く倒してはいるが
無傷ではない。
倒れた悪魔から、足元に広がる嘆きの沼へと、引き摺り込まれるが
それは、アルバの配下も同じこと。
召喚された悪魔の数も減ったが、同時にアルバの配下も減っていた。
ただ1つ、絶対的な違いがある。
それは『数』。
アガサの配下の殆どが、召喚した者達で
云わば『捨て駒』なのだ。
その為、報酬を餌に、召喚すれば何の問題の無いのだが
アルバは違う。
こちらは、ワァサから預かった部下なのだ。
連携や、意思の疎通は出来ているので、
その辺りは優位だが、人数に限りがある。
その為、数で押され始めると
徐々に、疲労の色が現れ始めた。
アガサの召喚した悪魔達の勢いが増したのだ。
「畜生・・・・・何人いやがるんだ・・・・・」
まだ、アガサ直属の配下達にも、対峙していない。
それなのに、多くの仲間が、
嘆きの沼へと沈んでゆく。
「くそじじぃ・・・・・絶対、殺す・・・・」
アルバは、力を振り絞り、目の前の敵を屠るが
仲間が減った分、アルバの闘いは熾烈を極めた。
そんな中、疲労から足元を滑らせてしまう。
「!!!」
──しまった!・・・・・
体勢の崩れたアルバに、召喚された悪魔の剣が、振り下ろされる。
『致命的な傷を負えば、嘆きの沼へと、引き摺り込まれる』
──畜生!
ここまでか・・・・・
覚悟を決めるアルバだったが、
振り下ろされた剣は、アルバには届かなかった。
「間に合ったようですね」
ゴージアが、剣を受け止めて、
アルバを救ったのだ。
「ゴージア!!」
ゴージアは、敵の剣を素手で掴んでいる。
「この程度の攻撃で、人が斬れるとは、思えませんが・・・・・
まぁ、主が参りますので、露払いを、しておきましょう」
その言葉通り、ゴージアが蹴りを放つと
剣を振り下ろした悪魔の体が、真っ二つに割れ、
他の悪魔達を吹き飛ばした。
「さて・・・・・それでは、参りましょうか」
独り言のように、呟いたゴージアに
起き上がったアルバが、声をかける。
「ちょっと待て、
お前、何処に行っていたんだよ・・・・・」
「申し訳ございません。
少し、用事を・・・・・・」
ゴージアが、指を『パチンッ!』と鳴らすと、
次々に、ベーゼ配下の悪魔達が姿を現す。
「このように、仲間を呼んで参りました」
「そ、それは、助かる・・・・」
ゴージアが呼んできた悪魔の数は、優に100を超える。
ここに来て、アルバは、初めて一息つく事が出来た。
その頃、アガサは焦っていた。
それは、突然、嘆きの沼が現れたからだ。
「こんな事が出来るのは、ベーゼだけだ。
だが、奴は、死んだ筈だ!
なら、何故!?
何故だ!!!
誰が、こんな真似を・・・・・」
焦るアガサ。
嘆きの沼が、一面に広がっている為
もう、城から出ることが出来ない。
「誰の仕業なのだ・・・・・」
アガサは、最悪の状況に、肩を落とし、玉座に座り込むが、
実は、嘆きの沼は、既に城の中まで、入りこんでいたのだ。
その城の中に入り込んだ嘆きの沼は、
自身の判断で、アンデットを呼び起こす。
そして、城を守っていた悪魔達に、襲い掛からせた。
アンデットは消滅させない限り、倒しても、再び立ち上がる。
それに、足元は、嘆きの沼なのだから、
言わば、無限ループに近い。
また、アルバ達に屠られたアガサの配下も、
嘆きの沼の中で、アンデットと化し
今度は、アガサの敵として現れ、襲い掛かってきている。
その為、苦戦を、強いられることとなったアガサ軍。
この情報は、直ぐに、アガサの耳にも届いた。
「ぐぬぬぬ・・・・・ベーゼめ!
死して尚、この儂に歯向かうのかぁぁぁぁぁ!!!!!」
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