第171話アルマンド教国 新たなる教皇
セグスロードが倒れたことにより、
教皇がいなくなった今、
アルマンド教国には、主導者がいない。
だが、この国をよく知る者はいる。
その者に、エンデが問いかけた。
「サハールは、これからどうしたい?」
エンデの突然の問いに、サハールは、驚いた顔をする。
「主様、それは・・・・・いったい?」
「このまま、この国を崩壊させるか、
それとも、アルマンド教国を建て直すか?
どっちにするか聞いているんだよ」
「そ、それは、私に、お任せいただけると
言う事でしょうか?」
「うん、そうだよ。
それで、どうする?」
サハールの気持ちは、決まっていた。
思い入れのあるこの国の崩壊など、望むわけがない。
「出来ることでしたら
この手で、この国を再建したいと思います」
「わかった。
じゃぁ、それで」
短い言葉だが、その返事を受け、
嬉しさが込み上げてくる。
──やっと、戻って来れた・・・・・・
改めて、感謝の意を伝える為、
サハールは、襟を正し、膝をつく。
「畏まりました。
今後は、この国の発展の為、尽力致す所存です」
挨拶を終えたサハールを前に
シャーロットが、口を開く。
「でも、1人だと、大変だとおもうわ」
その言葉に、エブリンが同意する。
「確かに、その通りだけど・・・」
「でも、誰かを付けるにしても・・・・・」
仲間同士、顔を見合わせるエンデ達。
『誰かが、残ることになる』
一様に、顔を見合わせた後、
ガリウスが、口を開く。
「ここは、やっぱり子爵のお嬢様に・・・・・」
その言葉に反応したエブリンとシャーロットは
顔を、ブンブと横に振り、言い返す。
「嫌よ、それよりガリウスは次男だから、何処に居ても問題ないでしょ」
エブリンから、指名されたガリウスは、
思わず、マリウルを見るが、
マリウルは、関わりたくなさそうにソッポを向く。
「おい、兄貴・・・・・」
「・・・・・」
「なら、決まりね」
「い、いや、ちょっと、待ってくれ!」
仲間同士で押し付け合いをしていると、
黙って見ていたサハールが口を開く。
「主様、お願いが御座います」
「ん、何?」
「可能でしたら、あの者達を、配下に頂きたいと思います」
サハールが示した方向には、
ファールとバンダムの死体があった。
「いいの?
あいつら、セグスロードの手下だったんだよ」
「はい。
寝返っていたとはいえ、全ては、家族を思ってのこと。
ですので、もう一度、チャンスを与えてやりたいのです」
「わかった。
サハールがそれでいいのなら」
エンデは、ファールとバンダムの死体に近づくと、復活した左手を伸ばすと
いつものように、黒い塊させると
黒い塊は、2人を、飲み込み始める。
そして、2人の姿が消えると
エンデは、サハールに声を掛けた。
「次は、サハールの番だよ」
手招きするエンデに、サハールは、困惑する。
「私ですか?」
「うん、その姿で、教皇は、無理があるよ」
その言葉を聞き、サハールは、自身の姿を見直す。
法衣を着てはいるが、その服は、死んだ時に着ていたものであり
現状、ボロボロで、汚れている。
それに、顔や体は、
こんな姿で、教皇として、人前に姿を現せば、
混乱を招くは、間違いない。
理解したサハールは、エンデに従い、黒い塊の中に入って行った。
魂の掌握について、
エンデは、覚醒したことで、
自然と、死んだ者の魂を掌握できるようになっていた。
それは、嘆きの沼とのバイパスが、新たに構成されたという事で
エンデの前で屠られた魂は、自然とエンデに吸い込まれ
嘆きの沼へと、送り込まれることになったという事なのだ。
そのバイパスのおかげで、今まで以上に、
アンデットとして復活させることが
容易いのだが、
ただ、送り込まれた魂の扱いは、今までと変わることがないので
数日経つと、嘆きの沼の養分として、吸収され、無くなってしまう。
そして、残留思念だけが、嘆きの沼へと誘う、『あの手』になるのだ。
そんな嘆きの沼へと、送り込まれたサハールは、
嘆きの沼の力により、生前の姿を読み取られると
新たに、体を構成され、
再び、エンデの前に、姿を見せるが
自身の姿に、驚きが隠せない。
目を見開いたサハールが、エンデに問いかける。
「主様、これは・・・・・」
「無事に、人と思える姿になれたみたいで、良かったよ。
でも、服は、着替えてね」
「勿論ですとも。
ですが、その前に・・・」
「わかっている。
じゃぁ、出すよ」
その言葉通り、黒い塊から、
アンデットと化したファールとバンダムが
姿を見せると、サハールが、2人に近寄る。
状況が飲み込めていないのか、
呆然としている2人に、サハールが声を掛けた。
「・・・・・儂の声が、聞こえるか」
サハールの声に反応し、2人が、顔を上げ
問いかける。
「私は、たしか、死んだ筈では・・・・・・」
「その通りだ、お前は死んだ。
だが、こうして生き返ったのだ。
アンデットとしてな」
「アンデット・・・・・」
2人は、顔を見合わせた後、
自身の姿を、確認するが
生前と、さほど変わりがあるようには思えなかった。
だが、殺されたことは、覚えている。
「本当に、アンデットになったのだな・・・・・」
「ああ、その通りだ。
お前達を、殺した本人が、が言うのじゃ。
間違いない」
「・・・・・」
戸惑う2人は、
エンデに、顔を向ける。
「復活させてまで、
私達に、何をさせようというのだ!?」
その言葉には、怒気が孕んでおり
反抗的な態度を見せるバンダム。
だが、その態度を、直ぐに後悔することとなる。
無言で近づいたサハールが、
闇の剣を取り出すと
迷いなく、バンダムの腕を切り落としたのだ。
突然、襲い掛かる激痛。
『ぐぁぁぁぁぁ!』
思わず、悲鳴を上げ
床に
サハールが、言い放つ。
「貴様!
主様に向かって、何たる態度だ!」
横で見ていたファールは、アンデットなのに、痛みがあった事も驚きだが、
それと同時に、逆らうことは、絶対に、許されない事だと理解した。
ファールが、改めて問い直す。
「エンデ殿でしたな。
1つ伺いたいのだが、何故、私達を復活させたのでしょうか?」
「ああ、それはサハールに聞いてよ」
エンデは、そう告げると、
バンダムの腕の治療へと向かう。
残されたファールは、サハールと向き合った。
サハールが、口を開く。
「・・・・・お前たちが裏切ったことは、正直許せぬ。
だがな、家族の為と知れば、多少の恨みも晴れよう」
「サハール様・・・・・」
「もう一度、この儂に仕え、この国の為に尽くしてみぬか?
まぁ、アンデットと化した身なので、
何もかも、今まで通りとは、いかぬかも知れぬが
今後も家族と暮らせるぞ」
「家族と暮らせるのですか?」
「ああ、勿論だ」
その言葉を聞き、治療を終えたバンダムも
驚いていた。
そして・・・・・・
2人は、サハールに仕え、この国の再建に
手を貸すことを、約束した。
だが、これで終わりではなかった。
『ただ1つ、気掛かりがある』とファールが告げる。
勿論、それは『天使』のこと。
この国が、2人の天使を召喚したことを伝えると、
エンデが、露骨に嫌な顔をする。
「え~、また天使なの!」
「主様、どうなさいますか?」
「どうしようもなにも・・・」
作戦を思いつかない今、
何を考えても無駄だとばかりに、
エンデが、話を続けた。
「まぁ、何とかなるでしょ」
「主様・・・・・」
「まぁ、確かに考えても仕方がないかもしれないわね。
でも、今は、その事よりも・・・・・」
「ん?」
エブリンは、エンデを見ながら、口を開く。
「随分、成長したわね」
「あははは・・・・・
僕も驚いたよ」
以前よりも、成長した姿へと変化したエンデ。
角も、大きくなっている。
「今の貴方、どう見ても、人族には見えないわよ」
「お姉ちゃん、どうしよう・・・・・」
姿が変わっても、内面は、変わっていない。
その姿のままで、姉であるエブリンに泣きつくエンデに
何とも言えない空気が漂う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます