青い花が咲くまで
しろい
上
今日も意味もなく町中を歩く。特にやりたいことがあるわけじゃない。ただ何か気を紛らわしていたいだけ。
俺は数年前に、交通事故で両親を失った。
そのとき、自分の片目も一緒に失われてしまった。
もうそのころから俺の時間は止まっている。
保健で金には困っていないが、学校もやめ、特に行く当てもないそんな日々。
今日も適当なジャンクフード店に入る。
もう正午を過ぎ、昼飯の時間だ。
適当な物を頼もうとメニューもろくに見ずに列に並ぶ。
(ジトーーーー)
ふと、視界の端に少女の影が映る。
少女と言ってもまだ、小学校の中学年ぐらいにしかみえない。
その子はじっとレジの上にあるメニューをみてよだれを垂らしている。
親も見つからない。列の邪魔になりそうだったので、何の気まぐれか声を掛ける。
「どうしたんだ君、親はいないのか?」
少女は声を掛けられ、透き通った目をこちらに向ける。
「親はいないよ、ひとりで来たんだよ」
すこし悲しそうに言う少女を見て、すこし同情しそうになったがそこまでお人よしではない
「注文しないなら邪魔になる。帰った方がいい」
すこし間をあけてからおなかをぐぅ~と鳴らしてから
「お腹減った。」
「は?」
「私、ここのお店のごはん食べてみたいんだ。」
今、俺がいるのはかなり有名なハンバーガー屋のチェーン店だ。
今時、食べたことない人がいるのには驚きだ。
「食ったことないなら母ちゃんでも呼んでくるんだな」
「いないんだ。」
「どういうことだ?」
「さっき言ったでしょ?親はいないって。」
普段、他人に同情するような人ではなかったが、自分の過去と少し重なりを感じ助けたくなってしまった。
「安いのだったら奢ってやる。それで満足して帰るんだな」
少女は目をキラキラさせながらこっちを見た。
「いいの!?」
席について、ゆったりとコーラでも飲みながら、昼飯を食べていると
「おいしいねこれ、こんなおいしいもの久しぶりに食べたよ。」
なぜか、自分と同じテーブルの席に座っている少女の姿があった。
「なんでここにいる?」
「せっかくだから一緒に食べようよ!あなたお名前は?」
面倒なのに絡まれてしまったと思いながらも名乗らないのもまた面倒なことになりそうだと思った
「
「私はミカヅキっていうんだ。よろしくね」
「それ食ったら、帰ろよ」
「うん、ありがとね」
人に感謝されるのはいつぶりだっただろうか
そんなことを考えながら昼飯を食べる
そうすると店の外に黒ずくめのスーツを着た人間が複数人店先を見渡しており、不自然に感じる。
そうして、次は店内にまで入ってきた。
その瞬間、おいしそうにハンバーガーを食べていたミカヅキも気づいたみたいだ。
そうするとどんどん顔が青ざめていった。
「私、もう行かなきゃ」
焦ったように席を立とうとする
何かあるようだ。
「知り合いか?」
「いや、私のこと追いかけてくる人たちなの」
誘拐か?ならばさすがに犯罪を見過ごすわけにはいかない
「なら、俺が警察まで連れて行ってやる」
「え?」
俺も席を立ち、ミカヅキと名乗る少女の手を引き、食べかけの昼飯が目に留まりながらも、裏口から走って逃げる。
「そんなところにいっても無駄だよ」
手を引かれながらミカヅキは言う
「どういうことだ?」
聞こうとしたときに道沿いのさきにさっきの黒づくめのスーツを着た人の仲間と思しき人たちと出くわしてしまった。
「いたぞ!」
やはりミカヅキを狙っているのだろう、俺らを見つけるとすぐに追ってきた。
こちらも踵を返して、反対側に走ろうとする。
すると後ろから
「周りに人はいない。ここならやって問題ない」
黒づくめの人たちに指示を出している人がおり、その一声で
パンっとすこし高めの破裂音が聞こえた。
するとすぐに道の端にあった。ゴミ箱がはじけ飛ぶ。
もしかして相手は銃を撃ってきているのか!?
必死にミカヅキと走るだが、相手も着実に追いついてきている
そしてまたパンっと音が鳴る
そこまで音が響かないのはサイレンサーでもついているからだろう。
何度もその音が鳴り、自分たちが逃げている近くの壁に傷がついていく。
しかし、何発も外れることはない。そのうちの1発がミカヅキの肩を貫いた。
「うっ」
ミカヅキはうなり声をあげるが俺もかまっている暇がない
必死に走り、自分たちが走っていた通り道の角に差し掛かり、それを駆使してやっとまくことができた。
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