このいとなみ

ももいくれあ

第1話

僕の嫁は頭を洗わない。

きっと、おそらくは、10日、あるいは2週間以上なのか、

いつも、かゆくて仕方ないと、頭を掻いては、つぶやいている。

それは彼女にとっても非常に不本意なことらしく、

納得もいかなければ、腹だたしくもあり、悔しくもあり、悲しいこと。

お風呂に入ることだけは1日も欠かすことなく、勿論、

毎日髪の毛を洗わずにはいられなかった。

そんな10年間を過ごしていた彼女。

住む場所がが変わり、住む相手が変わり、色んなことが変わっていった。

そして、あれから2年が経った今では、

お風呂に入ることも何日かおきになってしまった。

疲れるのだ。

そのすべてが。

ココロもカラダも消耗する。

彼女は病んでいた。

お風呂に入って、カラダや頭を洗い、その頭を乾かす行為が、

僕の嫁には労働になってしまったのだ。

かわいそうに。辛いだろうに。

くじけそうになりながら、きっと僕の嫁は毎日を闘っているのだろう。

カラダじゅうから、その疲労が滲み出ている。

夜は、いつもそうだった。

お風呂に入るかどうかで、闘っていた。

早くラクにしてあげたかった。

でも、かける言葉がなかなか見つからなかった。

だから、せめて、僕の嫁が、

闘い終わって、僕のところに帰って来た時には、

ぎゅーって、抱きしめて、トントンって、肩の荷物をおろしてあげた。

それが、僕と、僕の嫁の親密な夜だった。

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