22-2. 同級生に告白した!

◆ 古藤ことう琴乃ことの ◆



「お父さんを連れていかないで! お母さんを連れていかないで!」


 四角い箱に入ったお父さんとお母さんがどこかに連れていかれる。


琴乃ことの……。あそこにお父さんとお母さんはもういないんだよ。悲しいけどもういないんだよ」


 おばあちゃんが、涙を流しながら私にそんなことを言ってきた。


「やだー! 琴乃ことのも一緒に行く! 琴乃ことのもお父さんたちと一緒に連れて行ってよぉおおおおお」




●●●


 

 

 学校の帰り道!


 今日の私は幸せいっぱいだ!

 だって大好きな男の子と付き合うことができたんだもの!


「こ、琴乃ことの……。もうちょっと離れようか」

「やだーー」


 腕を組んだまま、唯人ゆいと君と家に帰る。

 今日の唯人ゆいと君はとても緊張している様子なのが分かる。


 手に汗もかいちゃってるし、表情も固いままだ。


 初めてのデートのときは全然余裕そうだったのに、今日の唯人ゆいと君は全然違う!


 緊張しちゃってるのかな? それが何だかとっても嬉しい。


「そうだよ琴乃ことの湯井ゆい君の言う通りもう少し――」

「なんで心春こはるちゃんがついてきてるの!?」


 むー。

 何故か心春こはるちゃんが一緒についてきている。


 絶対に唯人ゆいと君のこと気になっているんだ……。

 私と唯人ゆいと君が一緒にいるといつもおこりん坊になってたし。


「だ、だってあなた達がどこに行くか心配でしょう!?」

「お前の考えてるようなとこには絶対に行かねーよ!」


 唯人ゆいと君も段々と心春こはるちゃんには遠慮がなくなってきているように感じる。


 それがとても私を不安にさせる。


唯人ゆいと君は私と心春こはるちゃんどっちが好きなの!?」

「比べるまでもなく琴乃ことの


 ちょっと意地悪な質問だったけど、唯人ゆいと君がはっきりと私にそう答えてくれる。その言葉を聞いただけで私の不安は綺麗さっぱりになくなってしまった。


「あったり前でしょ! ここで私とか言ったらぶっ飛ばすわよ!」


 な、なんか今日の心春こはるちゃんはいつもに増してイライラしてるなぁ……。


 私が唯人ゆいと君を取っちゃったから怒ってるのいるのだろうか。


 心春こはるちゃんには申し訳ないけど、どうしても唯人ゆいと君のことを取られたくなかったのだから許してほしい……。


琴乃ことの……あのさ」

「ん?」

「な、なんでもない!」


 唯人ゆいと君が気まずそうに目線をそらしてしまった。

 うっ……ちょっと浮かれすぎちゃったかなぁ。


 ――あの日、唯人ゆいと君にキスされたおでこを思わずさすってしまう。

 

 正直あのときの私は口にキスされるのを期待してしまっていたけど、それ以上にお父さんみたいにしてくれたことが嬉しかった。


 懐かしくて涙がでそうになってしまった。


 唯人ゆいと君と話すようになってまだ一ヶ月だが、色んな思い出ができた。唯人ゆいと君にとっては一ヶ月かもしれないが、私にとっては長年の色んな思いが詰まっていた。


 好きになった理由が、お父さんと似てたからなんて言ったら唯人ゆいと君は怒るだろうなぁ。


 重すぎるとか思われたくないなぁ……。


(きっとお父さんなら許してくれるよね……?)


 どこかで見守ってくれるているだろうお父さんにそんな言葉を投げかける。


 お父さんは言っていた、“私を誰よりも好きだと言ってくれる人と添い遂げなさい”と!


 お母さんは言っていた、“琴乃ことのを誰よりも大切にしてくる人とお付き合いしなさい”って!


「ねぇねぇ、唯人ゆいと君は私のことどう思ってる?」

「な、なんだよ今日はしつこいなぁ。だから世界で一番大切だって」

「えへへへへ」


 思わず口角が上がってしまう。

 そのぶっきらぼうに言う感じも、本当にお父さんにそっくりだ!


 おばあちゃんにも彼氏できたよって言わなきゃ!

 仏壇にいるお父さんとお母さんにも報告しなきゃ!


(テストのご褒美で付き合ってほしいって、ちょっと強引だったかな……)


 そんなことを思いつつも後悔の気持ちは全然ない。


 だって、大好きな人がいつまでも自分の傍にいてくれるとは限らないんだから!

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