22ー1. 娘に告白された!?

「私と付き合ってください!」


 琴乃ことのが声を上擦らせながらそんなこと言ってきた。


「つ、合うーーー!?」


 琴乃ことの以上に大きな声が木幡こはたから聞こえてきた!


「えぇええええええ!? あ、あなたたちは何と何を突き合う気なの!?」


 木幡こはたがものすごく動揺している。


 相変わらずうるせぇなぁコイツ!

 詳細は絶対に聞きたくはないが、こいつとんでもない勘違いしてるだろ!? 


木幡こはたは黙ってて!」

「う゛っ」


 アホは放っておこう。

 今は琴乃ことののほうが先決だ。


「そんなに俺と合いたいのか……」

「うん、唯人ゆいと君と合いたいの」


 俺は何となくこの日が来るような気がしていた……。


 前世の俺は親父の影響で剣道と柔道をみっちり習っていた。


 ――いつの日か、琴乃ことのも俺と同様に武道に興味を持つ日が来るのではないかと思っていた!


「ツキ合うっていうのはダメだ。危険だからな」

「えっ……」

「まずは琴乃からを打ってこい!」

をうつ!?」

「俺は大丈夫だから思いっきり打ってこい! お前のありったけを打ってくるんだ! 俺が全部受け止めてやる!」

「そ、そんなの恥ずかしくてできないよぉ!」


 琴乃ことのの顔が耳まで真っ赤になってしまった!


「な、なによ! 琴乃ことのから突いてほしいってどんな変態よ!」


 またしても木幡こはたが乱入!


「はぁああ!? お前は黙ってろ! ややこしい!」


 こいつ頭の中は真っピンクか! 

 今は琴乃ことのと大切な話をしているのに邪魔しないでほしい!


「じゃ、じゃあ唯人ゆいと君は私がと言ったら合ってくれるの?」

「あぁ! もちろんだ! お前がを打ってきたら俺も誠心誠意、それに答えてみせるよ!」

「やったー!」


 琴乃ことのがとびっきり喜んでいる。

 ふっ、やっぱり血は争えないな。


「好き!」

「お、おう……?」

唯人ゆいと君は私のことどう思ってるの?」

「? 何度も言うけど一番大切な人だよ」

「うへへへへ」


 琴乃の顔がとろんとろんにとろけていく。


「じゃ、じゃあさ! これで決まりだよね!? 今度正式におばあちゃんに会ってくれる?」

「もちろんだ! って、んっ?」


 何で剣道のツキの話でうちのオフクロが出てくるんだ?

 ツキなんてしたらうちのオフクロ死ぬぞ?


「えへへへへ、そのうち結婚とかになっちゃったりして?」


「「結婚!?」」


 思いっきり木幡こはたと声がダブってしまった。




※※※




唯人ゆいと君、じゃあ帰ろ! 心春こはるちゃんはバイバーイ!」


 放課後になり、琴乃ことのがすぐに俺の隣にやってきた。


 早々にバイバイされて、木幡こはた琴乃ことのにみじん切りにされている。


 せ、背中に嫌な汗をかいてきた。

 やばいところで決定的に食い違っている気がする……!


「ちょっと湯井ゆい君、いきなり結婚ってどういうことよ」

「俺が聞きたいんだけど」


 木幡こはたがこそこそと俺に耳打ちしてきた。


「あ゛ーーー! 早速浮気してる!」


 琴乃ことのが俺と木幡こはたを引き離すように間に入ってきた!



「「う、浮気!?」」



 またしても木幡こはたと声がダブった!

 何がなんだか全然分からない!


唯人ゆいと君は私以外の女の子と話しちゃダメなんだから」

「待て待て待てーーい!」


 琴乃ことのがとんでもないことを言い始まったぞ!


唯人ゆいと君は私のこと一番好きなんでしょ?」

「もちろん」

唯人ゆいと君は私のこと一番大切なんでしょ?」

「当たり前だろ!」

「えへへへへ。じゃあ許してあげる」


 まだ教室にいるのに、琴乃ことのが俺の腕に組みついてきた。


 琴乃ことののぐいぐいが超加速している!!


 まるで時でも飛ばされたみたいに事態が飲み込めない。


「じゃあ唯人ゆいと君、帰ろうか? えへへへ」

「お、おう」


 きょ、今日の琴乃ことのはとびっきり機嫌がいい。


 考えろ……。


 何があったか考えるんだ!


「こ、琴乃ことの? 急にどうしたの? いつもより湯井ゆい君と距離が近くない?」

「だって彼女だもーーん!」


 琴乃ことの木幡こはたに見せつけるように俺と手を繋いできた!


「「か、彼女ぉおおおお!?」」


 はぁああああ!?

 何故だ! いつの間にそうなってたんだ!


「い、いつから!?」


 木幡こはたも心底驚いた顔をしている。


「いつからって体育の前の時間だよ。心春こはるちゃんもいたでしょ?」


 体育の前……?

 あれは確か、剣道のの話をしていたような。


 ツキあう……突き合う……付き合う……?


「あ゛ぁあああああああああああああああ!!!」


 言ってた!

 確かにって言ってた!


 し、しまったぁああああ!


 あの時の俺は久しぶりに競技としてできる剣道に心が浮かれていた!


「ど、どうしたの唯人ゆいと君? 大きな声を出して……」

「な、なんでもない!!」


 とんだ大馬鹿者だ! 

 無意識とはいえ、娘の攻略を一歩どころか二歩も三歩も進めてしまっていた!


 こ、こんな失態、天国にいるアイツに怒られる! 顔向けできない!


「ま、まさか突き合うって本当にそういう意味だったの……?」


 察しの悪い娘の友達が、すこぶる頭の悪いことを言っていた。

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