現代に転生したら前世の娘が同級生だった件【改稿版】

丸焦ししゃも

プロローグ 

琴乃ことのは何か欲しいものある?」


 ある日、お母さんが私にそんなことを聞いてきた!


「お父さん!」

「ぶぶー! お父さんはお母さんのですー」


 私は本気で言ったのに、何故かお母さんは楽しそうに笑っている。


「もうすぐ琴乃ことのの五歳の誕生日だからね」

「私の誕生日?」

「うん、大好きな琴乃ことのの誕生日。今年もお父さんが張り切ってるよ」

「お父さんが!?」

「いっぱいお部屋を飾り付けて、いっぱい美味しいの食べようね」

「うん!」


 うわぁ! 楽しみ!

 私、イチゴがのったケーキ食べたい!


 それにしても早くお父さん帰ってこないかなぁ……。

 最近、お仕事で遅くなるときがあるからとても寂しい。


「ただいま~」


 あっ! 玄関からお父さんの声が聞こえてきた!


「お父さんおかえりーーー!」


 やったぁ! お父さんが帰ってきた!

 早くお出迎えしないと!


「ただいま琴乃ことの


 玄関まで行ってお父さんの足に抱きつくと、お父さんは笑いながら私のことを抱っこしてくれた。


琴乃ことのは誕生日に欲しいものあるか?」

「お父さん!」

「欲しがらなくてもお父さんはずっと一緒にいるでしょう」


 お父さんが優しい顔で私に笑ってくれている。

 私はその顔が大好きだ。


「も~、琴乃ことのったらずっとこの調子で」


 あっ、お母さんもこっちにきた。


「本当に琴乃ことのは欲しいものないの?」

「うーん……?」

「あははは、じゃあお父さんとお母さんで琴乃ことのの欲しそうなやつ選んじゃおうかな」

「えへへへ、琴乃ことのはお父さんが選んでくれたやつなら何でも嬉しいよ!」

「もー、琴乃ことのは本当に可愛いなぁ」


 お父さんが私のことをぎゅーしてくれた。


「もー、あなたは琴乃ことののことを甘やかしすぎよ」


 お母さんが私の髪を撫でてくれた。


「だってなぁ」


 あっ、お父さんの抱きしめる力が強くなった。

 えへへ、お父さんの良い匂いがするぅ……!




●●●


 


「うぅ……ぐすっ……」


 昔の夢を見て目が覚めた。

 高校一年生にもなったのに、私は今でも幸せだったあのときの夢を見ることがある。

 

 “欲しいもの”か――。


 そう聞かれたら、今はすぐに思い浮かぶものがあるのに……。


「お父さん……お母さん……」


 お父さんとお母さんは、私が幼い時に交通事故で亡くなってしまった。


「もう一度会いたいよ……」


 頬を伝わる涙とともに、そんな言葉が漏れてしまった。

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