9. 古藤琴乃は好きだらけ!
「おはよう
朝、登校すると校門のところで
「おはよう。もしかして待ってたの?」
「うん!
「持ってるの右手なんだけど」
「いいから! いいから!」
そう言って
「
「商店街のほうにあるアパートだけど……」
「じゃあ今度から迎えに行くから!」
まぶしいっ!!
希望と期待に目を輝かせた
学校から見ると、うちのアパートは
自転車でもなければ普通に結構な時間がかかってしまう距離だ。
「いいよ、普通に遠いし」
「やだ。行きたいの」
「なんで?」
「
相変わらずめちゃくちゃぐいぐいくる!
そりゃ俺だって琴乃と一緒にいたいさ!
でもその“一緒にいたい”のベクトルが違うような気がする!
それにそのベクトルが俺に向かっているうちは安心なのだが……。
「
「えっ? も、もちろんだけどまさか
「あぁ、大切な話があるんだ」
「!!」
昨日、あのメッセージ事件から色々考えた。
うちのオフクロ経由で
何よりも
――天国で見守っててくれよ。
俺たちの
※※※
「そ、それで
放課後になり、学校の体育館の裏に来ていた。
いや、なんで体育館の裏?
まぁいい! 俺も
「
「う、うん」
「ここ数日、
「
「ふ、ふぅ……。は、はい! どうぞ!」
「じゃあ続けるぞ」
「は、はい!」
「すごく言いにくいんだけど……俺、
「す、好きが多い!?」
「あぁ、
「う、うん……」
「俺、隙だらけの
「す、好きだらけって!? そんなに私のことを……」
今にも泣きだしそうな
「こんなことをただの同級生に言われて嫌なのは分かってる! けど、ここで俺が言わなきゃ
俺の思っていたことをそのままに
俺は嫌われてもかまわない!
それで
「ううん! 嫌いになんてならないよ! そんな風に思ってくれて凄く嬉しい!」
「
俺たちの子供はこんなにも優しくて素直な子に育っていたよ。
「わ、私も
「こ、
「ううん、こちらこそありがとう! これからも宜しくね。これからも私にもっと好きを教えてね!」
「あぁ、もちろんだ。お前が危なくないように、俺が必ず隙を教えるから!」
「
俺は、感極まって
「えへへへ。お父さんの匂いがするぅ」
「勝手に匂いを嗅ぐな!!」
※※※
「えへへへへ」
帰り道、
「嬉しいなぁ。
「あんなこと言ったら、嫌われると思ったよ」
「そんなことないよ! すごく嬉しかった! 私、一人じゃないんだなって思えた!」
「
なんて良い子なんだ。
こんな風に育ててくれたオフクロには本当に感謝したい。
「あ、あのね……。私、さっき言いそびれちゃったんだけど……」
「うん」
「わ、私もね。
「あれ、
歩きながら
――聞き慣れたこの声は。
「お、おばあちゃん! 何でこんなところにいるの!」
「こんなところって、すぐそこはウチじゃないかい」
「もーーーーー! 今いいところだったのに!」
あ、あれは!
あの小憎たらしい顔は!
う、うちのオフクロだぁぁあああああああ!
昔はもう少しふっくらしていたし、しわも少なかった気がするが間違いなく俺のオフクロだ!
「あれ? そちらの子は?」
「この前、私を助けてくれた同じクラスの
「あっ! それはそれは!」
その老婆は俺のほうにゆっくり近づいてきて、骨折していない俺の右手を力いっぱいに握ってきた。
「この前はありがとうございます! うちの
「い、いえ……」
「ぜひ今からうちにいらしてお茶でも飲んでいってください!
ぐふふふふとその老婆が笑っている。
懐かしい!
このクソほどムカつく笑い声はまさにウチのオフクロだ!
「い、いいんですか!? ぜひ
ここでオフクロと話ができるなんて、こちらとしては願ってもいないタイミングだ! 今日はついているかもしれない!
「やめてよ! おばあちゃん!」
「今、うち散らかってるでしょ! そんなところ
いや、どうせうちの実家だからそんなの気にしないんだけどね。
きったねぇの知ってるし。
「もうそんなに照れちゃって。それにしても……」
老婆が俺と
「ぐふふふふ。あの
オフクロが本当に嬉しそうにそんなことを言っていた。
ツッコミたいところが多すぎる。
というか、しれっと親のそういうことをバラすんじゃない。
「じゃあ立ち話もなんだし早速行きましょうか」
「もーーーーー!」
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