7. お父さんとの手の繋ぎ方
「
「どうしたの
「ほら」
「危なっかしくて見ていられないから」
「えっ?」
俺の差し出した手を
「こ、これって……?」
「ほら、早く手を出せって」
「これで変な虫は寄ってこないだろ」
「う、うん」
俺は
「ゆ、
「慣れてないよ。(大きくなった娘と)手を繋ぐのなんか初めてだし」
「そ、そうなの!?」
「そうだよ。手、汗かいてるけど大丈夫か?」
「わわっ!! ご、ごめん!! 何だか今日はずっとドキドキしちゃってて……」
「ドキドキ?」
「う、うん。
「そんなことないよ。(心配で)ずっとドキドキしっぱなしだよ」
「えっ?
「そうだけど……」
「えへ、えへへ」
これで少しは安心かな。こうすれば
ふいに
「お、おい! この繋ぎ方は……」
「
「こんな繋ぎ方してな――」
「え?」
「な、なんでもない!!」
しまった!
動揺して余計なことを言うところだった。
「ほら!
ギャラクシーメガファイトってこういう手の繋ぎ方をする人たちが見に行く映画じゃないと思うんだけど……。
楽しそうな
(……)
折角、楽しそうにしているんだから繋ぎ方がどうこう言うのは今日はやめておいてやるか。
※※※
やはりチケット売り場は家族連れが多かった。
そりゃそうだ。
だって、バリバリの男の子向けのアニメだし。
男子高校生が友達同士で一緒に来ているようなのは散見するが、俺たちのような高校生カップル的なのは一人もいなかった。
いや、俺たちも家族連れではあるんだけどな!!
「えへへへ。楽しみだなぁ」
「
「そう? うーん、そうだなぁ。あえて言うなら死んだお父さんが好きだったからかなぁ」
「そ、そうだったんだ……」
「うん! 凄く好きだったみたい! 私がまだ子供の頃にね、お父さんが私にギャラクシーメガファイトのコスチューム着せて、お母さんに怒られてたみたい」
けらけらと
「お父さんの遺品に沢山漫画があったから、なんとなく見てるうちに好きになっちゃったんだ」
「なるほど……」
お、オフクロめ……!
俺の秘蔵の漫画コレクションを捨てていなかったのか!
中には
「お父さんね。結構エッチなやつが好きだったみたい」
ぎゃぁああああああ!!
見てた! 普通に見られていた!
前世の俺は、エッチなラブコメを沢山持っていた。
中にはとても
まさかそれを娘に見られていたとは……。
この期に及んで前世の俺への死体蹴りはやめてほしい!
「多分ね、お父さんって黒髪のおっぱい小さいキャラが好きだったと思う」
「あ゛ぁあああああああああ!!!」
実の娘に好きなキャラの属性がバレた!
地獄だ! ご近所に転生したと思ったら地獄に転生していた!
「どうしたの
「お、お父さんも知られたくないことはあると思うから……!!」
「そう? 面白いやつばっかりだったのに」
俺の言葉にあっけからんと
こっちはとてもじゃないかあっけらかんとしている気分にはならない。
「ふふふ、何だかね。
「多分同じ反応するだろうなァーー!!」
「でしょでしょ!!」
絶望的に何かが嚙み合ってなかったが、
俺は、前世の自分を生贄にして今の
パソコンは……パソコンは無事だろうな……!
映画よりも別のところが気になり始めてしまった。
※※※
「「めちゃくちゃ良かった……」」
語彙力消失。
二時間の映画を見終わり、
さすがギャラクシーメガファイト……。
俺たちの見たいものにしっかり答えてくれた。
俺が死んでいた間もコンテンツとしては随分展開していたようだ。
俺が知らないキャラクターがいっぱいいたが、それでも十二分に楽しむことができた。
特に最後に初代オープニングが流れたときは、不覚にも涙腺にくるものがあった。
「まさか、最後にあのキャラクターが活躍するとは思わなかったね!」
「あぁ! すごく良かったな!」
帰り道、
ここにあいつもいたらなぁ……もっと楽しかったに違いないのに。
ちなみにずっと手は繋ぎっぱなしだった。
映画自体は最高に良かったのだが、手を繋ぎながら見るような映画ではないとは何度でも言おう。
「ふふふ、何だか楽しい時間はあっという間だね」
映画を見た後は、そのまま電車に乗って帰ってきた。
そのまま普通に帰路につき、もう少しで
「そういえばお腹すいたね。痴漢騒動とかあったからお昼何も食べてなかったよね」
「そうだなぁ……」
時間は既に夜の七時前になっていた。
普通のデートならここでご飯にでも誘うのが鉄板なのだろうが……。
「もう遅くなっちゃうからこのまま家に帰ろうか」
「えー、もうちょっと
「ダメだって。おばあちゃんが心配するでしょ」
「そ、それはそうなんだけど……」
「こんなのまた何度だってできるでしょ」
俺がそう声をかけると、
「また遊んでくれるの!?」
「そりゃあ」
俺がそう言うと、
「絶対だよ! 約束だからね!」
「分かってるって」
「今度お父さんの漫画も貸してあげるから!」
「そ、それは大丈夫!」
「遠慮しないでよ!」
そんな話をしていたらもう
(懐かしいなぁ。外観は全然変わってないや)
最寄りの駅の外観は随分変わってしまったが、俺の実家は俺が死んだ後も特に変わってはいないようだった。
そのことが嬉しくて仕方がない。
「――じゃ俺はここで」
いつまでも感傷に浸っていられそうだったので、
「ゆ、
そのまま帰ろうとすると、急に
何か言いづらそうに手をもじもじしている。
「どうしたの?」
「じ、実はお願いがあるんだけど……」
「お願い?」
「あの、その……。わ、私と携帯の番号交換してくれませんか?」
えっ、今?
順序がごちゃごちゃすぎて、お父さんは大混乱です。
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